このレビューはネタバレを含みます
新作だった頃から気になってた作品。
グリコ森永事件を題材としたサスペンス作品。
生まれる前の事件なんでほとんど知らなんだ状態でしたが、こういういろんな人達に聞き込みする流れが好きすぎて、ずっと楽しかった。
どこからどこまでが実話で演出か全く分かりませんが、調べるのも野暮なんで観たまんまを吐き出すつもり。
安定感抜群の小栗旬、立ち位置も良かった。
時効の事件をほじくり返すことに何の意義があるのか、記者目線の葛藤にじわじわくる。
星野源も自分自身の罪の声に向き合う志しというか、家族のことを想うがゆえに行動する姿はなかなかでした。
物語のテンポが非常に入り込みやすく、ということはご都合展開だったのでしょうが、登場人物も多く簡単でないテーマを含むことを考えたら良心的だったと個人的には誉れ。
紆余曲折したら思考も気力も折れてたかも、限られた時間でここまで詰めようとなるなら十分な内容です。
学生デモに触れてもいますが、本作では反社会主義思想側の心理に多少理解が向いた。
元を正せば反する気持ちを奮い起こした対象がいるからであって、そんな連中が私利私欲を満たそうとしなければこんなことには。
でも権力を握る人間は総じて信用できないし、結局デモは起きて、起きたところで世の中何も変わらなくて。
意味など無かったと思い知らされるのが悲しい。
奮い立つという言葉、誇らしげにも聞こえるが、それが必ずしも正義にはならない。
馬鹿正直に生きた人達が損をするような時代、それは今も変わらない。
大事なのは子供の未来が失われたことだと作中で語れる。
言ってしまえばそれも結果論だし、何か変革を齎すには犠牲が付き纏うということ。
そうなるかもしれないことに子供を利用したことは、どう考えても正当化はできない。
過去の罪に犯されて関わってしまった人達が、少しでも希望が持てる未来、それがラストに描かれたのが救いでした。
