mさん

罪の声のmさんのネタバレレビュー・内容・結末

罪の声(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

話が面白かった
難しい事件をすごく丁寧に小栗旬のナレーションで解説してくれるし、凄いわかりやすく作品についていくことができた。

真実を追えば追うほど、どんどん重く辛い真実が明らかになるという構成がいい。単純に物語がどんどんヤバい方向に「より進む」というエンタメ的面白さもあるけど、やっぱり真実を追い求めるにはそれなりの覚悟を持たないといけないし、真実がそれほど良いものではないということが嫌でも伝わってくる。のうのうと幸せに生きてしまったあの星野源の苦悩が印象的だった。

小栗旬のキャラもよかった。記者のように上っ面だけ人当たりがいい感じ(記者さんがそういう人ばかりではないと思うけど少なくとも記者っぽいと思う特徴)がよかった。だけど社会部を辞めた経緯や、報道の価値に悩んだり、ラストの母親と弟の再会に涙したりする部分が凄い彼自身の個性に溢れてて嫌な気持ちは一切しなかった。

小栗旬と星野源が合流して2人になってからもいい。ちゃんと星野源は一般人であるから、相手が警戒を解いてくれて話してくれるという活躍の仕方をしていてよかった。(もし2人で合流しても小栗旬がずっと聞き込みをしていたら2人の意味ないじゃんって思うから)

入院したおばあちゃんや冒頭の海外での空振りなど、一見余計なシーンだと思いきや全て最後に伏線回収されるのが流石だった。(流石に当時気付けよという部分や警察ダメすぎるという部分もあったけど)

海外にもいくし、物凄いスケール感でびっくりした。

作中悲劇的な事件をエンタメとして消費してしまうことの是非を問いかけるけど、それはグリコ事件にインスパイアされてこの物語を作った本作自体にも言及しているようでハッとさせられる。それでもこの作品が作られた、それでも小栗旬が報道をした。それは映画トゥルーノースと同じで、入り口はエンタメでもとにかく人に伝えることが大切なんだろう。例えエンタメでも事件自体を人に伝えることで被害者の無念を共有して、事件の痛ましさに想いをはせることができる。可能性が生まれる。だから僕たちは報道するんだ。作品を作るんだというメッセージが伝わった。

小栗旬が「報道する意味はあるのか?」という観客と同じ想いを抱いているからメッセージがすんなり伝わる。もし「エンタメでも伝えることが大事なんだよ」ってスカして初っ端から言われたらここまですんなり受け入れられなかったと思う。

ラストお母さんが娘に会いたいと言って、息子が娘の声を再生してお母さんが幸せそうにする描写が凄いと思った。タイトルも罪の声だし、この声によって一生罪を背負わないといけないし、絶対に生まれてはいけない声だったんだろうけど、声は記録されてずっと残る。だからこそ、この声がお母さんが唯一娘という存在に触れられる存在になっている。この声がとられなければこのようなことにはならなかった、しかし、今はこの声にすがるしかない。すごく痛々しくて、事件に対するやりきれない思いが込み上げてきた。

こうやって話すとほとんど脚本の良さや俳優の演技についてで撮影や演出や構成自体はそこまで映画っぽくなかったんだけど良かった。
mさん

mさん