YUZO

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のYUZOのレビュー・感想・評価

4.7
映画という手段を用いたアートのような作品。
ウェス・アンダーソン監督の作品に特徴的な縦横に移動するカメラワーク。
なぜこのような撮影をするのか?
この作品を観てその1つの答えではと思えたのは、1カットが絵画のように作り込まれていること。これら1カットと1カットを繋いで見せるためには、縦横に動くカメラワークが最も都合がいいのではないかと思う。

絵画のような1カット毎の作品は、登場人物の立ち位置、表情、全体の構図、色彩等ウェス・アンダーソン監督ならではのセンスと緻密な計算により作り込まれている。あたかもファンタスティックMr.FOXのストップ・モーションアニメ映画を豪華俳優陣で再現したようなクオリティの高さ。これを約120分繋ぎ合わせて見せる気の遠くなるような作業をしてると考えると脱帽。

そんなお洒落に作り込まれた1カット毎の作品を流れで見せてもらえることで、ずっと楽しませてもらえるし、自分の中の映画の価値観が1つ変わるぐらいの衝撃があった。

レア・セドゥのよく引き受けたなと思える構図のヌード、ティモシー・シャラメの彫刻のようなルックスにチェスに対峙する姿等などこの映画の中の作品として収まってる。美術館のような映画という表現もしっくりくる。

出版社の追悼号の独立した企画として、短編小説のような3本からなるオムニバス形式。ストーリーは難解。1回の視聴だけですべてを理解できない。ストーリーに深みがある訳でもなく、ストーリーも感覚で楽しめる要素がある。

実写からアニメーションへの繋ぎも見事。グランドブダペストホテルでも観られた急に挟まれる疾走感溢れる尺長めのアニメーションシーン。特に終盤の街中を追いかけっこするシーンはトムとジェリーをも感じさせるユニークさに笑いを抑えるのが大変なくらい楽しませてもらえる。

もう1度映画館で観たいとも思えるし、市販化されたら作り込まれた作品群をじっくり観たいとも思えるくらい中毒性がある最高のエンターテイメント作品。
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