にょいりん

はちどりのにょいりんのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.0
十代前半、中盤に誰しもが感じるであろう、あのモヤモヤ感を丁寧に繊細に描いてちゃんとモヤモヤさせる凄さ。ある少女の小さな物語でありながら、1994年の韓国のゆるやかな息苦しさが漂うこの映画は、観る方の世代、国籍、性別によって思うことは様々で、それをあの自分でもどうしたいのか分からなかったモヤモヤ感を思い出しながらしばらく考えてしまう、っていう楽しさ。誰が悪とか誰が可哀そうとか、好きとか嫌いとかをパタパタ行ったり来たりしながら感情の輪郭を保つ主人公ウニは私達のようで、私達ではないから完全に感情移入できないけど、それを見続けていられるのはシナリオ、画面、役者の全てにおいての上質さと輝くセンスの為。
終盤に韓国史に残っているらしい大きな事件を象徴的に扱い、物語的にはっきりとしたメッセージが浮かび上がってくるが、個人的には芋にも油にもこだわって丁寧に揚げたコロッケにソースをかけすぎてソース味になってしまったような残念さが少し。