千里

はちどりの千里のネタバレレビュー・内容・結末

はちどり(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

あらすじに惹かれて観賞。90年代韓国のソウルに住む14歳の少女ウニの家庭環境や交友関係に起こる不和と、そんな状況下で唯一信頼出来るようになる塾講師の女性との出会いと交流を描く物語。あらすじに惹かれたとはいえ少し気になる程度だったのでスルーしようか迷ったが、世間の高評っぷりが気になったので劇場へ足を運んだ。紛れもなく傑作。これは観に行って正解だった。

自分たちの人生を振り返った上で、恐らく最初は純粋に子供たちを良い大学に行かせたいと願っていたはずが、徐々に外面を気にして勉学を強いるようになったであろう父親。そんな家族内でも立場の強い父親の圧を受け続けおかしくなっていく母親。両親のプレッシャーから勉学のストレスの吐口に妹であるウニに暴力を振るう兄。同じく両親のやり方が気に食わずストレスの発散に夜遊びを繰り返す姉。そしてそんな家族の不和の一切を受けて自宅では心が休まらないウニ。これ以上不破が広がると警察沙汰だったかもしれない、でも恐らく助けが必要になるギリギリ一歩手前(ウニからしたら必要だったとは思うけど)くらいの、外面的にはギリ普通の家族に見えるんだけど...といった家族間の不和の描写が本当に見事。

友人や恋人との交流にしても、"この間こう言ったじゃん"という事実から数日や数週間経っただけで気持ちがすぐに切り替わってしまう若さ故の行動の軽薄さなんかの描写も上手い。一見酷いなって思うけど、昔同じようなことされた記憶あるなって思い出す部分もちらほらあった。

そして塾講師ヨンジとの交流。何か嫌なことがあった時に親身になって聞いてくれて助言までくれる。恋愛感情ではないにしろ、そりゃ特別な親しみを抱く相手にはなるし、最後まで家族や親友にも言わない気持ちも理解できる。私自身も高校生の頃通っていた塾の講師に一人そういう良い先生居たなーってことを思い出した。

自分の過去と照らし合わせると凄く共感できる部分のある作品だった。全体的に過度な演出の強弱はなく、自然に描かれていてリアリティがあり、主人公ウニに感情移入し易く作られているところも素晴らしい采配だったと思う。

聖水大橋の事件に関しては実際にあった事件ということだけど、本作を観て初めて知った。ヨンジ先生が何故塾を辞めたのかは分からないままになってしまったけれど、彼女が遺した言葉や道筋はウニのこれからの人生の中で大いに役立つんだろうな。

本当に良い映画だった。


2023.12.17 スコア : 4.5
huluにて2回目の鑑賞。何度観ても本当に良い映画。ヨンジ先生のような先生に出会えていた自分は幸せだったなと。また誰かにとって自分がヨンジ先生のようになれていたらいいなと、思う。
千里

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