オザキ

燃ゆる女の肖像のオザキのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.3
『燃ゆる女の肖像』があまりにも「燃ゆる女の肖像」だったために「燃ゆる女の肖像だった…」ということばしかまだ引き出せない…。
「燃ゆる女」の「肖像」であり、「燃ゆる」「女の肖像」であり…。

ずっと火は焚かれていた。
ずっと海は荒れていた。
ずっと風は強かった。
ずっと女は愛し合っていた。
ずっと女は生きていた。
あの5日間、命と愛はずっと燃えていた。
そして今なお観客の瞳の奥で燃えている。

特に印象的な「音」。
劇中の全ての音を上書きしたくなくて耳を塞ぎたい。
たった二つの音楽は言わずもがな、焚火が爆ぜる音、波のうねる音、風が岩を叩く音、女たちの歌声、話し声。
忘れたくない思い出のように耳に残る。

「燃えるような恋」とはよく言うけど、何においても自由に燃えることの許されなかった(今でも…)女たちが恋に燃えて、生きることに燃えて、その炎が映画全編に絵画として閉じ込められて、銀幕の上に解き放たれる。
それは熱く、強く、爆ぜる。
燃えても、燃え尽きることはない。
揺らぎ動く絵画。まさに映画。
『燃ゆる女の肖像』。
オザキ

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