くりふ

北の果ての小さな村でのくりふのレビュー・感想・評価

北の果ての小さな村で(2017年製作の映画)
3.5
【ドキュメンタリーに溶けゆく】

予告の映像が凄かったのと、異文化との付き合い方が今後、自分の切実なテーマともなるため、行ってみた。

撮影上がりという監督の切り取る最果ての地、グリーンランドは初めて見るような異界として立ち現れる。その後、植民地化が見逃した文化ギャップが次々提示され、未だにそうなのか…と驚かされる、

でも…その先がどうにも。実在の人物が、実際の出来事に沿ってフィクションを演じる、という手法で撮られたという本作、映像記録としては間違いなく価値がある。が、物語としてはどうだろうか?

主人公は、何となく村に馴染んでゆくが、その人生の選択を、結局どう受け入れたのか?猟師を夢見るイヌイットの少年は、結局、まずはどう生きることに決めたのか?そして、村が抱える問題については?

ドキュメンタリーとして、個々のショットは力強いが、物語に必ずしも貢献しているようには思えない。映像記録にフィクションが呑み込まれ、有耶無耶になったようで居心地が悪く…腑に落ちぬまま劇場を後にしました。物語としては随分、踏み込みが甘いと感じます。

果てなき凍った地平、触れそうに蠢くオーロラ、カーアクションよりずっと興奮する犬ぞり追跡、心揺らぐ野生のシロクマ家族、天を衝くクジラの息吹…残された映像はどれも、驚くほど鋭利で美しく、それに刺されるだけでも、劇場で体験する価値はあると思います。

また、かの国が抱える課題を突くことで見えてくる、誰にも当てはまる普遍的な問題、あぶり出されるじぶんの問題…。

改めて、振り返るきっかけを与えてはくれます。が、映画としてどうか?と問われると、ちょっと言葉が濁ります。

<2019.8.4記>
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