回想シーンでご飯3杯いける

アトランティックスの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

アトランティックス(2019年製作の映画)
3.8
今年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品が、早くもNetflixで配信開始。最近のカンヌは「万引き家族」を筆頭に欧米以外の作品が受賞するケースが増えてきた。本作はアフリカのセネガルを舞台にしたダークでファンタジックなラブストーリーで、セネガル人の父を持つフランスの女性監督マティ・ディオプの長編デビュー作に当たるそう。

ターワーホテル建設現場における賃金未払い問題、移民問題、一夫多妻制、スマホ普及による女性の解放等、社会情勢を背景にしているのが特徴的で、そんな環境の中で自らの恋心を貫こうとする女性アダの姿が、とても美しく描かれている。

ストーリーはアメリカの「ゴースト」にも近い。日本人が観ると、登場人物の見分けがつき辛く感じるが、まあそれはお互い様。例えばカンヌで上映される「万引き家族」だってセネガルやフランスの人達は同じように感じているのだろうけど、本作にはそんな壁を越える引力を持っていると思う。アフリカの西端に存在するセネガルの海は波がとても大きく、力強さと不気味さを併せ持つ存在として描写されている。音楽は監督の趣味なのか、ダークなエレクトロで、これがまた独特。