「薄氷の殺人」でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したディアオ・イーナン 監督の最新作。前作「「薄氷の殺人」では静かに燃える男と女の情愛と殺意が青みがかった凍える冬の風景の中で描かれていたが、今作ではギャングと女達の欲望がごちゃまぜにからまる夏の夜がカラフルなネオンに彩られながら美しく猥雑に描かれていた。まるでウォン・カーウァイの映画ような色と光の美しさだったが、意味深で不可思議な場面構成はなんだか鈴木清順の映画を観ているようでもあった。物語は特にひねった内容ではないが、この手のノワール的映画はあらすじよりムードやキャラクターや風景が重要なのでこれぐらいが良いかと思う。
どんな内容か忘れるかもしれないけど、ある日ふとその感覚を思い出してしまうようなジャンル映画の新しい波。
