ノラネコの呑んで観るシネマ

シチリアーノ 裏切りの美学のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.4
ベロッキオが描く、いぶし銀の実話クライムドラマ。
1980年代のシチリア。
巨利を生むドラッグビジネスにのめり込み、金儲けのために身内で抗争を繰り返すコーサ・ノストラを内部告発し、弱体化させた一匹狼、ブシェッタの葛藤。
原題はズバリ「裏切り者」の意味。
コーサ・ノストラ本来の理念を忘れ、変質して金の亡者となったのは組織の方。 
だから自分は決して「改悛者」では無い、と主人公は言う。
前半は主人公が逮捕され、内部告発者になるまで。
後半は告発されて逮捕された悪党数百名が、ワラワラ登場する裁判劇の構成。
見どころは、殆ど喧騒の動物園と化した後半の集団裁判。
ホントにこんなことやったの?と言う位のカオスな状況下で、主人公がかつての仲間たちと罵り合う。
告発によって組織の力は削がれても、歴史あるコーサ・ノストラのシンパはどこにでもいる。
自分こそが真に名誉ある男だと信じても、一瞬たりとも心休まることがないのが哀しい。
主人公が若い頃に犯した最初の殺しの扱いがいい。
結局のところ、ファルコーネ判事が語ったように、目糞鼻糞の自業自得。
一度悪の道に堕ちた者には、安息の時は永遠に来ないということか。