半変人のお調子者

夏、至るころの半変人のお調子者のレビュー・感想・評価

夏、至るころ(2020年製作の映画)
2.0
主人公や一瞬だけ映る学校の描写に全く実在感が感じられない。『桐島〜』『アルプススタンド〜』『サマーフィルム〜』『子供はわかってあげない』という傑作青春映画を観た後だと、登場人物及び学校の実在感がどれだけ大事なのかがよく分かる。この映画で描かれる青春はまさに大人が頭の中で考えるような青春で実在感は死んでしまっている。
例えば学校のシーン、ディスカッションって言ってるのに、机も動かさず、個々が好きなように喋る…しかもテーマは「私は〇〇になりたい」…いやいや高校のディスカッションってもうちょい高度なテーマだと思うんですけど、小学生の初級編ディスカッションじゃないんだから笑笑
主人公の実在感の無さも酷い。幸せが何か分からないという悩みはまぁ百歩譲って分かるとしても、「幸せ」をわざわざネット検索したり、なりたいものを人に聞かれて「空気」と答えたり、事あるごとに人に幸せとは何か聞いたりするだろうか。そもそもこの主人公は何か思い詰めるような事があるわけでもなく、ただただボケ〜っとしてるだけに見えるからあんまり感情移入もできないし、友達が「お前みたいになりたい」みたいな事言ってキレても、えっこいつってそんなにカッコいい奴かな…としか思えない。それよりかはちゃんと将来を見据えて勉強に励む君の方がよっぽどカッコいいぞ!!

太鼓だの煙突だのパプリカだの、色々アイテムは出てくれどそれぞれの存在感がことごとく薄い為、映画を観ていて一体これには何の意味があるのかと思ってしまう。
特に太鼓は主人公が唯一熱中しているものであり、オープニングとクライマックスの盛り上げに使うほど重要であるはずなのに、『主人公にとって太鼓はどういう存在なのか』『太鼓をするという事はどういう事なのか』『友人が憧れていた主人公の太鼓を叩く姿』といった描写が抜け落ちてしまっている為、太鼓の存在感が非常に薄くなっていると言わざるを得ない。

長々と書いたけど、この映画の一番良くない点はつまらない事。これに尽きると思う。
ある程度は山あり谷ありにしないと、完全に真っ平な話というのはいかがなものか。

映画評価基準

この映画が好きか 4
没入感 3
脚本 3
映像 6
キャスト 8
感情移入度 3
音楽 4
余韻 4
おすすめ度 4
何度も観たくなるか 2

計41点