ワンワンワン111

生きるのワンワンワン111のレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
5.0
命がないことを宣告されてから、生き始める。終わりがあることで生きることを認識する。どの時代においても不変なことだと思う。

生きることが当然であり、生きることに価値さえも感じない愚かな現代人と言われるけど。戦争という生死を賭けて生命の尊さを知っている人たちでさえ「生きる」ことの意味を見失うことに衝撃を受けた。この作品は1952年製作なので終戦から7年経過するだけで、これほどの無気力な生活になってしまう。やはり人というのは忘れる生物なんだろうな。どれだけの命を失おうと、時間が経つと忘れてしまう。

物語終盤に、主人公の奮闘に心を打たれて変わる決意をする人たちも、気づいたら元の木阿弥に戻ってしまう。これこそが人の本性なのだ。この本性を認識した男が去ると同時に物語の「終」のエンドマークが打たれる。人の終を宣告する絶望だ。

人というのは、終わりを宣告されてから生き始めるのが人である。この物語で人の本性を受け入れて、はじめて人として生き始めるのだろう。