おーたむ

生きるのおーたむのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
4.8
見るのを楽しみにとっておいた黒澤明「生きる」を、この度初鑑賞。
とてもよかったです。何かを為すための力が呼び覚まされる感じ。

本作は二部構成ですが、前半、後半、どちらもとても惹き付けられます。
前半、渡邊が自身の死期を悟り、人生の最期をいかに生きるべきか悩み惑うシークエンス、享楽の虚しさを知った後、活力いっぱいに生きる人物から自身の生きる意味についての示唆を得る、という流れは淀みなく、しかし力強いです。
渡邊がついに自分の人生を生き始めた瞬間、祝福するように背後に響くハッピーバースデーはとても印象的でした。

後半、通夜の席では、主人公の不在を効果的に使い、別々の人間の口から提示されたピースが隠された真相を形作っていく脚本の巧みさに魅せられます。
一世一代の大仕事の手柄を横取りされ、失意の中で死んでいったと思われた渡邊が、実は……の終盤には、じわりと感動の波が押し寄せてきて、鑑賞後の余韻もひとしおでした。
いい映画だったなあ。

内包されたメッセージがかなり直接的なので、ぼんやり生きてる私にとっては身につまされる作品ですが、一生懸命に生きることの尊さは、強く心に残ります。
明日を生きるための活力になる映画は数多くありますが、本作はその最高峰にある作品の一つだと思います。
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