佐藤克巳

陸軍の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

陸軍(1944年製作の映画)
5.0
第二次長州征伐で長州から襲撃された小倉の老舗質屋主人笠智衆は、尊攘派で奇兵隊監軍山縣有朋とも親交があり、息子横山準は奇兵隊贔屓。小倉藩士原保美は、「大日本史」を託して、白村江敗戦を機に防人を常駐して以後元寇以来の欧米侵略の国難危機に藩士として死ぬが笠には国に奉ずるよう嘆願した。息子三津田健は、日清戦争後の三国干渉抗議の為上京したが狭心症で絶命、息子笠智衆は陸軍士官学校に進む。笠は、病弱で日露戦争中病院で寝たきりの屈辱、家業も没落、妻田中絹代と博多で再起を期した。成金だが愛国者東野英治郎と親交が出来、その息子と我が子星野和正とは戦友となる。日露戦友上原謙と下関で再会、上海事変の戦況に東野は機関銃隊員息子の安否を気遣うものの三人の戦友を誓った。そこへ田中から星野出征の連絡、博多で一家団欒の一夜を過ごした。田中は、日頃から子供の躾には厳しかったが、星野の病弱さと気持ちの優しさを理解していた。いよいよ天皇に捧げた星野の出征パレードに躊躇していたが、いてもたまらず沿道を駆け出し、行進中の星野を見つけると、母親としての激励を贈るのだった。これを木下恵介監督の傑作と呼ばずしてなんとしよう。
佐藤克巳

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