ShinMakita

心霊喫茶「エクストラ」の秘密-The Real Exorcist-のShinMakitaのレビュー・感想・評価

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強い霊感を持ったため頭痛に悩み生きる目標を見失っていたサユリは、ふと入った喫茶店エクストラで幸福の科学の教義に接し、修行を積んで神通力と悪魔祓いの能力を習得。これを使ってエクストラを訪れる客たちの様々な悩みを解決していくことになる…


「心霊喫茶「エクストラ」の秘密」。

以下、光に勝てるネタバレはない。


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ついに童貞を卒業した。そう、ハッピーサイエンス映画(以下HS映画)童貞である。一生童貞でも構わなかったのだが、映画マニアの端くれである以上、一度は経験しなくてはならない通過儀礼なのだ。

最初に、幸福の科学に対する俺のスタンスを書いておく。

俺は宗教と名のつくもの、特に新興宗教に好意は抱いていない。しつこい勧誘の憂き目や、信仰にのめり込んだ家族のせいで家庭内不和に陥った経験があるせいだ。だから、自分や周りに迷惑かけてこなけりゃ、勝手にお祈りしてください、と思っている。

しかし、幸福の科学だけは見過ごせない。いや、幸福の科学の教義・信者、そして大川隆法氏そのものに嫌悪はない。むしろ教義については、後にも書くが、共感に近いものも抱いたと言っていい。
大大大嫌いなのは、この教団が、市中のスクリーンを使い、一般向け作品を装って映画を公開していることなのだ。このHS映画さえなければ、この劇場でハリウッドのマイナー作品や好きな監督の新作が観られたかも知れない…とムカついたことは一度や二度ではない。

したがって、HS映画は、内容云々ではなく存在自体が許しがたい敵なのである。

しかし敵である以上、我々はその力を知る必要がある。そのクオリティは、果たしてあまたあるキラキラ邦画・クズ邦画を凌駕する出来なのか?怪しいとはいえ海外の映画祭での受賞が妥当な作品なのか?アカデミー国際長編映画賞に日本代表で出品される可能性はあるのか?…これらを確認しなくてはならない。

というわけで、身銭を切って敵陣偵察でございます…

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初めに言っておくと、通常シーンのカメラワークと演出にはおかしな点はありません。つなぎもストーリーの流れにも違和感はありません。つまり、邦画のクオリティとしては並。イソップのナントカみたいな去年の上田他監督作より出来は良いです。映像のチープさはVシネマ並ですが、それでも客席200くらいの劇場で普通に見栄えする感じ。少なくとも、映画的破綻はありません。

ストーリーの違和感…これは、もう強引に自分を納得させるしかありません。

・引ったくり犯の家に1人で行くなんて!
・トイレで足掴まれたら、まず疑うのは悪霊じゃなくて変質者だから、呼ぶべきは警察!
・宿直の先生、部外者のサユリとイサムをなぜ校内にホイホイ入れる?

というヘンテコは無数にあるけど、ここを乗り越えないと話が進まないんだよね。

除霊エピソードの積み重ねは、ポルターガイスト・シックスセンス・エクソシストの安いパクりですが、ここはむしろツッコミ入れて楽しみたい微笑ましい部分。主人公サユリが幸福の科学の本で学んだ話をイサムに滔々と語るシーンは、「感謝の心を忘れない」だの「神さまに見られて恥ずかしくないよう真面目に生きる」だの、真っ当な感じで好感です。信心で超能力が得られたって部分は飛躍が過ぎるし、地下鉄で何かをばらまいた奴らに近い香りがしてしまいましたが、ま、そこは流しておくとして、

問題は、アンチHSのメタファーである「悪魔」との対決クライマックス。これまで劇中で何度も流れる珍妙な挿入歌と共に見せる戦隊シリーズなみの戦いに大笑いしてしまいました。


結論。クオリティが一般邦画並みかどうかという話以前に、そもそも全く別物の映像作品であるということが解りました。独特のストーリー展開、独特の挿入歌演出がある限り、「商業映画」として評価されることはまず無いでしょう。ということで、邦画界を憂う映画ファンとしては一安心です。


…おい、幸福の科学さん、こーゆー映画はお宅の教会の視聴覚室でやってくれ。信者勧誘したけりゃ、どこか場所用意してそこに集めて見せれば良いよ。俺たちの大事な劇場のスクリーンを占拠して、有意義な映画鑑賞の機会を奪わないでくれ、頼むから!

以上。
ShinMakita

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