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ソウルフル・ワールドのkahoのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.4
そんなの見つかんないよ苦しい苦しいそんな酷く厳しい話を凡人にしてくれるなと思ったら、ちゃんとやさしく終わってくれてよかった。
なんも見つかんなくても、崇高なゴールを掲げなくても、ジャズれる瞬間があるなら生きててもいいかもね。

夢みたいな念願の瞬間って、そのときは心から「このために生きてんだ!今こそ生きてるって実感する!」って生命力としか形容できない活力と幸福感が漲るのだけど、それって実は、それが過ぎたり失われたりしたときの喪失感や虚無感に繋がるきっかけでもあって。

何かのために努力できること、ある目標を見据えて気力を生み出すことは変わらず素晴らしいでしょう。ただ、生活の一部に過ぎないとりとめもないこと、何の変哲もない自分が感じるひとつひとつのことだって、同様に尊重されていい。
綺麗事で語りきれない現実だってあるけど、だとしても、どちらの軸も等しく持てたらきっとずっと生きやすいよね、って話だと理解しました。

とはいえ、囚われてしまっている真っ只中にこれが思い出せるかしら、という疑問は残ります。自分を救えるかはわかんないけど、せめて、大切な人が囚われて偏っていたときに、真ん中に座り直してくれるような言葉をかけられる人であれたら幸せね。

あとはほーーんと小さいことかもしれないけど、マザー・テレサもお手上げ!は分かりやすい例えでしょうが、軽はずみな扱いにも思えてチクッとした。制作側の提示する考えに至っていないモノとして実在した人物を用いるってひどく傲慢に思える。
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