ニャーすけ

ソウルフル・ワールドのニャーすけのネタバレレビュー・内容・結末

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
2.3

このレビューはネタバレを含みます

ピート・ドクターは最も尊敬する監督のひとりで、これまで彼が撮ってきた作品はどれも傑作だし、特に『インサイド・ヘッド』は自分にとって数少ない生涯ベスト映画の一本。だから本作も並々ならぬ期待を胸に鑑賞したわけだが……いや〜、これはまったく好きになれない。

言いたいことはわかる。でも、うだつの上がらない人生に不満を抱きつつも、日常のささやかな幸せに価値を見出すって、別に普通じゃね? 誰もが当たり前のように日々感じていることを話のオチに持って来るのは脚本としてあまりにも凡庸でありきたりかつ予定調和、そして何より偽善臭くて敵わない。
もし俺がジョーの立場なら、あんな一世一代のチャンスを物にした直後なんて恥も外聞もなく浮かれ騒ぐに決まっているし、そういう「夢や目標の達成」と「日々の生活に根ざした喜び」とを比較するのがそもそも間違っている。すべてを犠牲にしてずっと努力してきたことがやっと実を結んだってのに急に醒めてんじゃねーよ! 『芋粥』かテメーは!

テーマ以外の部分に関してもいろいろ酷い。
例えば、あの「ソウルの世界」の法則は作り手の都合だけが安易に優先された結果、統一感や説得力を著しく欠いている。ジジィがちょっと看板振り回しゃ行ける世界だと判明した瞬間、真面目に映画を観る気が失せた。『インサイド・ヘッド』では首尾一貫して現実の心理学に則った世界観が徹底されていたのとは雲泥の差であると言わざるを得ない。
他にも、22番がただジョーを成長させるためだけに登場する脚本上の駒にしか見えずマジカル・ニグロっぽいとか、その一方でジョーがはなから良い人すぎて彼が成長することの感動が薄いとか、猫が出てきてからのドタバタ全部つまんねぇぞとか、問題点をあげつらえばきりがないけど、本作を好きな人もいるでしょうからもうやめときます。俺は生まれる前のソウルだった頃「何が嫌いかで自分を語る小うるせぇクソ野郎」の属性付けをされておりますため、苦情はジェリーさんたちまでお願いしますね。
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