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アルプススタンドのはしの方のmのレビュー・感想・評価

4.8
日本映画界の隠れ鬼才・城定秀夫監督、と、このアカウントで何回も書いてきたけど遂に『隠れ』ではなく一般の人達に城定監督の才能が知れ渡る時が来た。あ〜〜〜嬉しい、城定監督おめでとうございます!10年近くずっと城定監督ファンだったので、とても嬉しい。

大傑作。舞台を映画にきちんと変換する演出と脚色。人物の動かし方、カット割とカメラワークに現れるテクニック。そしてきちんと熱くなる物語。

1シチュエーションの舞台を映画に変換する上で(低予算・限られた撮影スケジュールで)どうすれば良いか?という課題の最適解を脚色も演出も選び取っている。
一つの舞台をメインとしつつ適度に人物を別場所に出して変化を出し、映画ならではのプロローグとエピローグを付け加えて世界を広げる脚色が巧み。元々の高校演劇の脚本が素晴らしい、という事は言わずもがな!
下手な監督がやると『全員一定の位置に座りっぱなし・棒立ち』みたいな大惨事になる所を、的確に人物を動かして的確に配置を変化させていき(その動き・変化こそがドラマや感情を現す、まさに『映画』!)、それを的確にカットを割って捉える演出の映画らしさ。城定監督はやはり本物の『映画監督』だ。クライマックスでしっかりギアを上げてきたのも流石。

俳優陣も皆良い仕事をした。メインの中で女の子3人はリメイク舞台版からの続投だそうで、仕上がってる感があった。優等生の子が眼鏡っ子なのは城定さんのいつもの趣味ですね。

リア充の吹奏楽部の女の子や吹奏楽部のイヤミな女の子コンビ、熱血過ぎるウザったい先生といった脇の人達が型にはまらない人物造形をされているのがまた良かった。作り手の思慮深さ、城定さんのチャーミングな人間愛がある。

ローテンションで始まった映画は適度に伏線を散りばめながら(伏線のほのめかし方も良い塩梅)、徐々に熱気を帯びていき、手に汗握る熱いクライマックスへと突入していく。グラウンドを見せなくても想像させる音響効果の素晴らしさがこの映画を力強く支えている。音は確実に映画館仕様です。
熱いクライマックスと素敵なエピローグが『しょうがないなんて言わせない!』と観客の心を揺さぶる。その温度と青さはまさに『青春映画』だった。

欲を言うと、もっと予算を!余裕のある夏の撮影日程を!引き画を撮れるだけのエキストラを!甲子園ロケを!という所が脳裏をちらついた。色々制限や現実が見えちゃうから。それでも作品は素晴らしかったし、城定監督は流石だった。
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