こなつ

少年の君のこなつのレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
4.2
「ソウルメイト」のデレク・ツアン監督による中国/香港合作、青春映画。以前から観たかった作品「ソウルメイト」と「少年の君」を連続で鑑賞。

2020年93回アカデミー賞で、国際長編映画賞にノミネートされ、圧倒的称賛とともに一躍注目を浴びた作品。

主役のチョウ・ドンユイは、「13億人の妹」という愛称で親しまれ、人気・実力ともに中国圏を代表するトップ女優の一人。相手役のジャクソン・イーは、中国のボーイズグループTFBOYSのメンバーのトップアイドル。本作で俳優としての評価が高まり、演技派俳優としての地位を確立した。

中国におけるいじめや過酷な受験戦争、ストリートチルドレンといった社会問題を背景に、優等生の女子高生と不良少年が互いに惹かれて合っていく青春ドラマ。中国社会が抱えるリアルな社会問題に真っ向から挑んだ作品といえる。

全国統一大学入試に向けてひたすら勉強をしていた成績優秀な女子高生チェン・ニェン(チョウ・ドンユイ)。しかしあることがきっかけでいじめの対象になってしまう。そして彼女は、偶然に出会った不良少年シャオベイ(ジャクソン・イー)に女子高生の自分を守って欲しいと頼む。辛く孤独な日々を送る優等生の少女と、ストリートに生きるしかなかった不良少年。二人の孤独な魂はいつしか互いに引き付けられていく。

「大学に行って世界を守りたい」というチェン・ニェンに、「君が世界を守るなら、俺が君を守る」と言うシャオベイ。
チェン・ニェンが歩く後ろには必ずシャオベイの姿があった。

君が俺の明日を変えてくれた。
君が私の明日を守ってくれた。

殺人事件に巻き込まれたチェン・ニェンに「この方法しかない」とシャオベイが下した決断があまりにも切なく、悲しい。そして二人に寄り添うある若い刑事の行動によって、非常に強いメッセージ性を持つ作品の力を感じ、救われた。

殺伐とした学校内、机の上には参考書が山積み、軍隊の教官みたいな教師、人のことなど無関心な教育現場。格差社会を抜け出すには、良い大学に行くしかないと親の期待を一身に受けて生きる子供達。日本以上の厳しい現実。

チョウ・ドンユイは、実年齢がジャクソン・イーより8歳も上だが、20代後半とは思えぬ年若い雰囲気を醸し出し、違和感のない女子高生役を体当たりで演じている。二人のピュアな演技が終始胸を打つ。

中国社会を批判した内容に、中国上映当時は一切の宣伝がなかったものの、250億円に近い興行収入を叩き出す大ヒットになった。この作品が投げかけるメッセージが多くの人々の心に届いたのだろう。

「ソウルメイト」同様、デレク・ツアン監督の手腕が光る素敵な作品だった。
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