明石です

ブラック・レインの明石ですのレビュー・感想・評価

ブラック・レイン(1989年製作の映画)
5.0
NYで捕らえたヤクザの大物を、日本の警察に引き渡すべく大阪へやってきたアリメカ人刑事2人。ところが極道組織の策謀に嵌り、ヤクザを野に放ってしまう!てなわけで大阪を舞台に、血で血を洗う抗争に巻き込まれる話。極道警察日本アメリカ、組織も国境も越えて仁義を通す男たちの物語。これは大大大傑作でした。

シリアス顔の巻き込まれ俳優マイケル・ダグラスが主演し、変てこなラテン風英語を話すおちゃらけた雰囲気の相棒にアンディ・ガルシア(オーシャンズより前で、貫禄がなく良い感じに三下っぽい笑)。大阪の刑事に高倉健、悪役のヤクザに松田優作と、昭和のスターが揃い道頓堀や大阪駅を舞台に大暴れ。ただし松田優作は金正日みたいな刈り上げヘアで正直カッコ良くはない笑。長髪パーマのイメージだったからなおさらね。

「部外者」と言われながらも、逃したホシを自身の手で挙げるべくプライドで体当たりするマイケル・ダグラスのお姿と私立探偵モノのようなストーリーはなかなかにハードボイルド。そしてアメリカから来た破天荒な「部外者」と頭の堅い上司の間で板挟みになる中間職の高倉健は哀愁あって好き。団地に一人暮らししてる庶民感もズルいなあ。そして日本人の集団意識とルールへの敬虔さを上手く捉えてると思う。まあNYから来た警官2人は半分汚職警官なわけで笑、そのあたりの価値観の違いを比較したい意図は明らかかもだけど。

なにしろ本作の製作時はジャパン・アズ・ナンバーワンの日本の脅威が本当に迫っていた時代だと思うと感慨深い。「今のアメリカにあるのは映画と音楽だけだ。日本は機械を作って未来を築き、平和を手にした」という高倉健の台詞よ、、バブルが弾ける前の当時は、この言葉にも真実味があったのだと思うと少し哀しさはある。そしてそれに対するダグラスの返し、「だが新しい思いつきを持つ人間は押し潰されてきたんだろう?」と、こちらは今も真実なのがなお哀しい笑。

前に置いた遮蔽物越しに登場人物を捉えたり、あえて濃い霧の中で撮影したり、油が滴り落ちるようなむき出しのパイプが林立しているこれまた煙モクモクの工場を舞台に選んだりと、画作りへのこだわりにリドリー・スコットらしいセンスを感じる。田んぼの畝をバイクで駆け抜けるシーンの壮観さときたら!やや大雑把に言えば、エイリアンやブレード・ランナーの世界観を日本に移して、宿敵をマフィアに置き換え、それらの映画を作り直したような雰囲気。ハンス・ジマーの音楽も洒落ていながらも緊張感あって素晴らしい。てなわけで作画も音楽も役者もストーリーも全ての面で秀でた、この映画にまつわる全てが好きな1作なのでした。

——好きな台詞
「この国に7年暮らしていまだに戸惑う。多分はノーで、イエスもノー」
明石です

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