(2014年4月18日のレビュー)
“松田はそのオーディションで迫真の演技を見せ、見事に役を射止める。そして松田の強烈な個性を反映してか、撮影中に幾度も脚本が書き直されて佐藤の絶対悪度が増し、主役すら食いかねないあのキャラクターが造形されていった。”
(新・午前十時の映画祭 HPより)
松田優作は1989年11月に他界し、本作は遺作になってしまった。そして伝説になった。
タイトルのブラックレインとは、第二次世界大戦で原爆投下後に降った黒い雨のことのようだ。そして、アメリカ文化が押し付けられた結果、佐藤(松田優作)のような男が生まれたと。
本作では、アメリカ文化の押し付けを“ブラックレイン”という語で暗喩していた。
そしてこのような暗喩を、日本人監督の作品ではなく、海外作品で聞けるとは、リドリー・スコット監督の見識の深さには恐れ入る。
佐藤はブラックレインによって誕生したのだ。だとしたら、やはり本作の裏の主役は松田優作ということになりそうだ。高倉健もマイケル・ダグラスもよかったが、松田優作がスクリーンに登場した時のあのドキドキ感は、唯一無二のものなんだなと感じた。
ただ、1986年生まれの私にとっては、ストーリーが古く、若干物足りなく感じる。(1989年の作品だから正真正銘古いのだが。)松田優作より、彼の息子たちをよく知る世代では、評価が分かれるところだと思う。
ストーリーよりも、俳優や監督そのものに興味のある人におすすめです。
製作:1989年(米)
監督:リドリー・スコット(『エイリアン』『ブレードランナー』)
出演:マイケル・ダグラス、アンディ・ガルシア、高倉健、松田優作