Yoshishun

ルパン三世 THE FIRSTのYoshishunのレビュー・感想・評価

ルパン三世 THE FIRST(2019年製作の映画)
3.3
“狙いすぎてて恥ずかしい”

「ルパン三世?一世?どっちやねん!」と突っ込みたくなるタイトルはさておかさせていただく。あとで皆様でお召し上がりください。
約23年ぶりの劇場単独映画となる本作は、製作発表時は歓喜に湧いた前評判を、ティザービジュアルとスタッフで奈落に叩き落とした。まさかのフルCG仕様、そして悪名高き山崎貴が監督・脚本というベギラゴンレベルのパワーワードが並んだことで、当初の予想を下回る興行となってしまった。誰も望まぬ立体化などスラダンやDB並の完成度でないと納得し難いだろう。どこかディズニーっぽいCGには嫌気が差す。

鑑賞前の不安が大きすぎる本作だが、一番最初の予告編を思い出してほしい。原作者モンキー・パンチ念願の企画のはずが、そんな彼でさえも評価しながらも後世の作品に対する影響を苦言として呈したルパン像である『カリオストロの城』を、TVシリーズや映画などのモンタージュの1番最後に、それもしつこく流す。監督自身、『カリオストロの城』っぽくなってしまったと笑っていたが、確かに本作は正義の味方としてのルパン三世としてモロ色濃く反映されている。

悪役に利用されているヒロイン、いつも以上にイケメンなルパン、インターポール総動員、次元と五右衛門が脇役、どことなく臭さを感じるラスト、そして極めつけは主題歌。キー変えたら「炎のたからもの」になるのではないか?

ただ『カリオストロの城』はルパン映画の呪縛としてだけでなく、それらしく作れば決して失敗することはないという良いお手本でもある。元祖冒険活劇であり、要点さえ押さえれば間違いなく凡作になるのだ。

本作はまさにそれらしく作っており、良くも悪くもカリオストロの城らしい作品だ。ただそれだけならまだしもゲスト声優である広瀬すず、藤原竜也は他の声優陣と比べても浮いている印象がある。さらには、山崎貴監督の悪い癖のある説明し過ぎな脚本が炸裂している。本作の宝であり兵器でもあるエクリプスをナチの残党に奪われた際、レティシアがわざわざ「悪の手に渡った」と補正的な台詞を加えてくれる。

ルパン三世という作品とフルCGとの親和性は意外にも高く、ドラクエ程大事故を起こさなかっただけに、逆にチャレンジ精神のないことが仇となった。ルパン映画としてはやや及第点以下。
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