まっつん

地獄のデビル・トラックのまっつんのレビュー・感想・評価

地獄のデビル・トラック(1986年製作の映画)
4.0
ご無沙汰してます。気が向いたので久々投稿です。最近は「スティーブン・キング関連作」をチラホラと観ておりまして(と言ってもまさに星の数ほどありますので数作だけですが)、本作はおよそ15年ぶりぐらいに鑑賞。スティーブン・キング自ら監督・脚本を務めた作品であり、ヘッポコ映画として有名な本作ですが、僕はですね、昨今の鼻持ちならない所謂「バカ映画」とは一線を画す映画だと改めて思った次第。

大体ですね、最近の「どう?バカでしょ?」ってこっちの顔を伺ってくるような映画って嫌いなんですよ。それって、要はタランティーノの「デス・プルーフ」の弊害なんだと思うのです。いや、デス・プルーフは素晴らしい映画で大好きだし、タランティーノ自身も真剣に作った映画だと思うのですが、誤った受け止められ方をされてる感は否めない。「ほら?バカでしょ?こんなもんでしょ?」という観客との馴れ合いの中で出来た映画のどこに面白みがあると言うのだろうか?真のバカ映画とは狙って作れるものでは到底ないのである。大切なのは「本当に面白いものを目指して作っている」ということであり、にも関わらず何かしらの理由で極端にバカバカしくなるという「歪さ」こそが最大の魅力なのです。その「歪さ」の中にダイナミズムだったり、奇跡的に宿った映画的な一瞬がキラリと光る…..それは映画を観る醍醐味そのものであり、「狙って仕組まれたバカ映画」には決して到達することが出来ない「凄み」がある!という風に私は思っております。

そういう意味で本作は、紛れもなく「本当に面白いものを作ろう!」と思っている!にも関わらず映画的には何ひとつ上手いこといってないわけですよ。とにかく語り口がチグハグで緊張感の欠片もないので、映画の中で起こっていることがひたすら風景として通り過ぎていく。しかし、どうでしょう?この映画のチグハグさは今観ると、どこかクールさを湛えたものになっているのではなかろうか。最近の映画はやたらとウェットなものばかりである。そのおかげで語りのスピード感を欠いた「モタっとした」映画がいかに多いことか。そういった最近の映画文法に慣れていると、本作の「見せ場が見せ場として機能せずにサクッと過ぎ去っていく」この軽さは大変クールに感じられます。思えば、僕は幼少期から70年代、80年代の映画に慣れ親しんで来たので、やはりこのテンポ感は非常に心地が良い。そして、クライマックスでは爆発の連発で強引に盛り上げにかかる。これは映画のビルドアップとして、完全に正しい。困ったら爆発だ!という映画監督を僕は常に尊敬しています。

加えて、当時の時代感のようなものがプラスに作用しているのも事実です。「アウトサイダー」「ブレックファスト・クラブ」そして大傑作「レポマン」でお馴染みのエミリオ・エステベスのパンキッシュな魅力が作品のクールさを増している。同時に、キングが直々に頼んで音楽を担当することとなったAC/DC。随所で掻き鳴らされる彼らのロックンロールが、ユルい画面と相まって不思議と「いい感じ」になっているのも奇跡的といっていいでしょう。ちなみに当時のAC/DCは低迷期の真っ最中でありました。しかし、本作のサントラが爆売れしたことにより再浮上のキッカケを掴んだ….ということは重ねて言っておきたいなと思います。