まっつん

天然☆生活のまっつんのレビュー・感想・評価

天然☆生活(2018年製作の映画)
3.8
古民家カフェへのヘイトが、無限に高まっていくこと請け負いの傑作です。

親戚の家に身を寄せる50歳のニート男性。仲間たちと慎ましくも愉快な生活を送っていたところに、都会からある一家が引っ越して来て…という作品。

「田舎は最悪!」ということは全人類普遍の真理であります。私もそこそこの田舎暮らしですので、毎日壁に向かって「最悪!」「はやく引っ越したい!」と叫んだり叫ばなかったり。映画においても「田舎は最悪」「田舎は怖い」といった映画は星の数ほどあります。訳あって都会から田舎に引っ越して来た人々(たいてい気弱な人が多い)が、田舎の強烈な同調圧力や因習に懐柔されていく…というのはもはや娯楽映画の一つの型になっています。本作はそんな「田舎映画」の型を一種、逆手に取った作品と言えるかもしれません。要は「田舎は最悪!だが、田舎に憧れてわざわざ都会から引っ越して来る奴らは田舎モンより田舎臭くて最悪!」ってことですよ。

田舎暮らしニートのタカシは別に田舎を良いとも悪いとも思っていないわけだけど、一応気の置けない仲間がいるからそれなりに楽しく暮らしているわけです。そこに都会からやって来た「ナチュラルなスローライフに憧れるキモい一家」。彼らは、古民家カフェをやりたいようで、その美化された田舎像を無配慮にもズケズケと押し付けてくる。それって、我々が「田舎映画」を観て「嫌だなぁ」と感じる田舎者ムーブそのものなわけです。

この一家が本当に最悪で。「人間はもっと自然に帰って生きるべきなんですよ!」みたいなことを玄関先で熱弁してきたりしましてね。ウザいことこの上ない。しかも、許せないことにセックスするとき奥さんがスク水のコスプレをしている!コスプレセックスをする奴は問答無用でキモいが、その中でもスク水をチョイスする奴はもはや救いがたいほどにキモい!てか、お前ら「人間は自然に帰った方がいいんだ!」とかって言うなら、それこそセックスは全裸でしろよ!んで屋内ですんな!青姦とかせえ!

彼らのおかげでタカシの田舎ライフは崩壊していくのですが、その様が辛くのしかかってくるのは、タカシをはじめとしたオッサン三人組の姿が丁寧かつ、微笑ましく描かれているからだったりします。みんなで亀を飼ったり、バーベキューに出かけたり、たまに小競り合いをしたりと、とにかくオッサンたちが愉快で可愛らしい。もはやオッサンたちのアイドル映画的なムードすら漂っており、可愛らしいオッサンからしか得られない養分を存分に摂取できます。

そんなオッサンたちの絆を、様々な深謀遠慮を巡らせることでズタズタにするスローライフ一家。「許せん!!」とこちらの憤りがMAXになったタイミングで、唐突な超展開が訪れるのがこの映画のもう一つの見どころであります。詳しいことは言えませんが、観てると「なにその話?!」となること間違いなしの超展開。からのド派手な人体破壊描写のサプライズ感覚は凄まじいうえに、その皮肉の効いた末路もお見事。欲を言えば、もっと暴れ散らかして欲しかったというのが正直なところで。本当はド派手に殺されて欲しかったアノ人やコノ人が生き残っているところが、惜しい…非常に惜しい…

とは言え、可愛いオッサン達とツイストの効いた展開が味わえる怪作なので、結構オススメ。