まっつん

オオカミ狩りのまっつんのレビュー・感想・評価

オオカミ狩り(2022年製作の映画)
5.0
劇場での鑑賞は叶わなかったので、配信スタートと同時にレンタル。1日で2回観ちゃいましたね。いやぁ、景気がいい。大好きです、こういう景気が良くて元気な映画。

話は至ってシンプル。凶悪犯を護送するマニラ発プサン行きの貨物船が舞台です。手錠をかけた犯罪者たちを船で運ぶだけの簡単なお仕事…だったはずが、乗っているのは肝の据わった極悪人の集まり。当然、物事がスムーズに進むわけもなく、あっという間に人身の自由を手に入れ、船を占拠し逃亡するために護送警官を襲撃する。警察vs凶悪犯の血を血で洗う戦いが繰り広げられる中、とんでもない奴が現れて…

恐らく「コン・エアー」×「ユニバーサル・ソルジャー」っていう説明が1番適切な気がしますが、僕は観ながら「これ『プレデター』じゃん」と思ってずっと観てましたよ。中盤で現れる「アイツ」はサーモグラフィーで周囲を視認しており、なんと体表の温度を下げることで難を逃れる!なんていう「プレデター」そのまんまの展開まで用意されています。「プレデター」の美点はそのストイックなまでのソリッドさにありますが、これは「オオカミ狩り」にも通ずる。キャラクターの背景や説明は必要最小限に抑え、ひたすら豪快に血が噴き出す暴力描写に特化していく。シンプルな設定とシンプルなキャラクター。そして暴力。余分な贅肉は極限まで削ぎ落としていく。物語の核は「生きるか死ぬか、殺すか殺されるか」それのみ。監督はインタビューで「『プレデター』を意識したわけではない」と明言しておりましたが、ここまで「プレデター」づいてる作品を見せられると「本当かなぁ?」と思ってしまいます。

しかし、本作のような作品をレビューするときには、そういった細かいアレコレは置いてといて、「人がたくさん死ぬから面白い」と堂々と言うべきですね。とにかく人が死ぬとこがね...最高なんですよ。通常じゃ考えられないほどに、血をブヒブヒと噴き出しながら死んでいく。「あ!死んだ!」「また死んだ!」「こいつは強いかも...やっぱり死んだ!」と凄まじいスピードで人が死んで死んで死にまくる。しかも、フラグもクソもない状況でどんどん死んでいくもんだから緊張感が途切れることはありません。「このままだとあと10分ぐらいで全員死んで映画が終わってしまうぞ!」と思っていると、ヘリコプターで死亡要員を投入。こういうシンプルさがいい。別にいちいち話なんか無くてもいいのさ。

本作はざっくり2回、展開上のツイストがあります。はっきり言って1回目のツイストから終盤までの展開は圧倒的。と言うのも、本作は初っ端から凄く漫画的なんですよね。漫画的なキャラクター、漫画的な暴力の映画。蹴り一発で15mぐらい吹っ飛んで、蛇口を思いっ切り捻ったかのごとく血が吹き出して死ぬなんていうのは漫画的としか言いようがない。しかし、漫画的な表現に振り切り過ぎず、エグい暴力の痛みが伝わるラインでギリギリ踏み止まっているのが、1回目のツイストから終盤まで。残念なのは、2回目のツイストで結果的に漫画的な表現に振り切ってしまうので、どうにもそれまでとの噛み合わせが悪い気がしてしまう点です。それに伴い説明的な描写が増えて来て、そこまでのスピード感に比べると締まりが無い印象があります。願わくば、そのままのテンションで最後まで走り切って欲しかったなと。

とはいえ、過剰な暴力、過剰な血量に驚くことは間違いなしです。僕なんか、あるキャラクターが死ぬシーンは巻き戻して20回ぐらい観てしまいましたね。最近の韓国産バイオレンス映画は、どこか2010年代前半までの作品の再生産にしかなってないよなぁ…と感じることが多かったので、本作のようなエクストリームに突き抜けた作品が再び登場したことは喜ばしいことですね。