まっつん

プレデター:ザ・プレイのまっつんのレビュー・感想・評価

プレデター:ザ・プレイ(2022年製作の映画)
4.0
「血が出るなら殺せる!」

古今東西ありとあらゆる戦場を一方的に「狩場」認定し、大宇宙から首を突っ込んできては戦士を血祭りに挙げてきたスペース忍者ことプレデターさんの新作。今回はなんと1700年代の地球を舞台に、コマンチ族の若き女戦士との血を血で洗う激闘が繰り広げられるのであった!

プレデターシリーズの何がいいか?って言われたら個人的にはひとつしか無くてですね。それは「ど根性!」ということです。1作目と2作目を思い出してほしいのです。そもそも強そうなことこの上ないシュワルツェネッガーが、未知の強敵を目の前にして上記の名台詞を吐くじゃあないですか。「血が出るなら殺せる!」って本当に威勢が良いだけで、言ってることめちゃくちゃなわけですよ!しかも、この台詞を吐いた時点では有効な手立ては一個もない....それでも、ダッチ・シェイファー大佐は知恵とど根性!を持ってしてプレデターに勝利するわけです。そして2作目ですよ。こっちに関しては強そうでも何でもない中年ハミ出しデカが主人公。戦力的にも圧倒的に劣る中年親父がど根性!で食らいついて食らいついて....そして最後にはプレデターたちから「戦士」として認められる。この「ど根性!」ぶりが好きなんですよ僕は。だから、それ以降のシリーズも各々の作品で面白いところはあったんだけれども、やはり圧倒的に根性が足りない!足りなすぎる!

そんな僕にとって「本当に観たかったプレデターがやってきた!」と遂に思わせてくれたのが本作でございます。ハッキリ言ってど根性!の塊ですコレは。何が良いってやはり、主人公の女戦士ナルさんの物語がドッシリと中心にあることです。しかも描かれていることが現代的であると。コマンチ族は大変に家父長的なコミュニティです。男が狩りに出かけ、女は男の帰りを待つ。その中で女性でありながら戦士であり、狩人であろうとするナルさんは「女だから」舐められ、「女だから」狩りは出来ないと思われている。彼女の兄は村のNo. 1狩人。兄の姿に強烈なコンプレックスを感じながら生きてきた....「私だって出来るはずなのに」と。そんな彼女が誰よりも敏感に「未知なる脅威」に気付く。男たちは「女だから」彼女の言っていることに耳を貸さない。

「舐めんじゃねぇぞ!」

ナルさんは自分自身を証明するためにひとり村から離れ、「試練の狩り」に自ら身を投じていく。もうね、この時点でど根性!過ぎるだろ!ウルウルですよ私は。

そんな彼女を待っているのは苦難の旅路です。ここで、上手いのはプレデター側の理屈が極めてシンプルかつ明確なものとして提示されていることです。要はプレデターは「その場その場で強い方と戦う」ということが明確に示される。常に多勢に無勢なナルさんは、時に村の男たちに、時に文明化された白人たちに懐柔されていくわけです。そして、当然ながら懐柔した側がプレデターのターゲットになっていくと。だから要は、プレデターと直接対決するまでにナルさんは「人間社会」に負けまくるのです。

で、こっからがアツいとこで、「本当に強いヤツとは誰だ?」という話になってくるわけですよ。腕っぷしが強いはずの男たちはとっくのとうに皆殺し。そして、最後の最後まで残った「強いヤツ」。それは「何度負けても挫けずに立ち上がり、再び戦いを挑んでくるヤツだ!」ということ。そんなヤツこそが最強の戦士だ!男か女かなんか関係ねぇ!一対一で勝負だこの野郎!このど根性!ですよ。これこそがプレデターシリーズのスピリットそのものではないか!

加えて、過去作への目配せなんかも非常に上手い感じでやってましてね。まぁ、ちょっとやり過ぎかな....ってとこも無くはないですが、全体的に見るとこの程度のファンサービスはあって然るべきでしょう。ただ、シリーズを観てる人ならすぐ分かる「とある小道具」が登場するわけですが、後々のことを考えると少し暗い気持ちになってきます....あの時あそこにコレがあったと言うことは....

プレデターの装備も過去作に比べ極めてロートルなものになっています。「プレデターまで人類の文明レベルに合わせる必要ある?」とも思いましたが、そのおかげで新たな装備やガジェットを楽しむことが出来たので、コレはコレで良しかなと。

あと犬好きの方も必見です!犬がカワイイ!何はともあれ良作ですよ!