行定監督はキム・ギドク監督の『悪い男』(傑作)をたしかフェイバリットに挙げていたが、本作は又吉直樹による原作(未読)ものとはいえ、至る部分で『悪い男』を彷彿させるものがあった。
冒頭の永田と沙希の出会いのシーンも『悪い男』ほどの強烈さはないが、永田の沙希への執着っぷりが伺えるシーンになっていたり、永田というどこまでも不器用で、沙希を愛しているがダメな自分を変えられず、苛立ちを彼女にぶつけたり(暴力は振るわないが)なキャラクターにも『悪い男』の主人公を彷彿とさせるものがある。
山﨑賢人、松岡茉優という堂々たる人気スター俳優主演作でありながらも、どこまでも生活感とどん詰まり感が画面から漂ってきたし、特に山﨑賢人はこれまで演じてきたような役柄とはまるで異なる新境地を開拓しており素晴らしいと思った。
そんな永田がクズすぎてノレないという感想も無茶苦茶わかるが、自分はどうしても嫌いになれない作品だった。。2017年、2018年の『ナラタージュ』と『リバーズ・エッジ』は今一つノリきれない作品だったが、昨年の『窮鼠はチーズの夢を見る』と本作は秀作。
また、近年『愛がなんだ』や『花束みたいな恋をした』等、“恋愛映画”というよりは“恋愛についての映画”なるものの逸品が邦画から複数出てきている現象も興味深い。