あばばば

劇場のあばばばのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
4.6
めちゃくちゃよかった……松岡茉優の泣きながら笑いながら怒りながら喋る演技がすごすぎた。この作品のすごいところのひとつは肉体的な接触がほとんどないところじゃないかな。手を繋ぐシーンだけで、キスシーンのひとつもない。肉体的な執着をあえて撮らないことで精神の癒着への純度をあげたのかもしれない。
最終的に永田が特になんの反省?も見せないところが若干ウオ〜……ってはなる。さきちゃんも永田と共依存状態になってたのはあるけど。結局自意識自己愛ルサンチマンヒモ男のどうしょうもない贖罪をオナニー的に見せつけられたような気もしないでない…けど、それをなんとかマイナスの印象に持っていかなかったのが、さきちゃんとの共犯関係なのだと思う。自分たちの過去が演劇として昇華されたことは二人にとって救いだったのかなあ……
彼女に優しくされればされるほど自分のクズさが浮き彫りになることが恐ろしくて破滅的な行為を繰り返してしまう男が、彼女が酒を飲んだり浮気をしたりと堕落しかけたときに不意に彼女に優しくなるのも怖かった。永田がものすごい照れ屋で「明日忘れてくれんねやったら手繋ぎたい」って言って彼女に手繋いでもらって照れ臭さでへんな顔になってんの、ンウワアアアアカワイイーーッ!!!こりゃ絆される!!!ヒモ男の才能があるゥーーー!!!って雄叫びあげてしまった。とにかく多くのシーンが痛々しくてどうしようもなくて、又吉は目も当てられない人を描くのがうまいよなあ……お互いこんな関係じゃダメだってわかってんのに「どこまで持つんだろう」って行き着くところまで行かないと自分たちを止められなかったのも、本当に全然正しくないし擁護できない。なのに、これが人生だって思わされてしまった……
あばばば

あばばば