アニマル泉

Mank/マンクのアニマル泉のレビュー・感想・評価

Mank/マンク(2020年製作の映画)
4.0
「市民ケーン」の脚本家マンクを描くデビット・フィンチャーの最新作。Netflix制作。
モデルとなったウィリアム・ランドルフ・ハーストやMGMの大プロデューサーであるメイヤー、タルバーグとの確執、オーソン・ウェルズ監督とのストレスフルなやりとりが描かれる。1940年頃のハリウッドの緻密な人間関係が描かれる。「市民ケーン」のグレッグ・トーランドの撮影を意識した白黒撮影で、フィルムの掛け替えの印までマニアックに作りこんでいる。逆光の室内、夜の場面が続くのだが暗くてシャープさがない。むしろ真似るならば長回しをやってほしかった。「市民ケーン」でトーランドが開発したパンフォーカス撮影も長回しの技法である。つまり決定的なショットが撮れていないのである。軸になるショットがない。細かいカットが重ねられるばかりだ。スタンバーグの企画を出まかせで会議する場面は無用なカット数である。
本作の課題は①主役に魅力がない。ゲイリー・オールドマンは酔っ払いで饒舌で機知に富んでいるのだが、しかしマンクという人物の魅力が足りないのだ。華がない。色気がない。②知事選挙の妨害工作と「市民ケーン」の脚本作りがどうもリンクしない。選挙の話は工作した友人の監督の自殺など、かなりの時間を割いている。ただしマンクが開票速報を待ちながら飲みつぶれる幻想的なモンタージュはムルナウの映画のようだった。
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