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ソー:ラブ&サンダーのRのネタバレレビュー・内容・結末

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

※ラストの展開に関して盛大に触れています。

映画館で。

2022年のアメリカの作品。

監督は「ジョジョ・ラビット」のタイカ・ワイティティ。

あらすじ

サノスとの最終決戦のその後、ソー(クリス・ヘムズワース「スパイダー・ヘッド」)はガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと共に宇宙に旅立っていたが、一方、全ての神々を排除しようと企む「神殺し」ゴア(クリスチャン・ベール「フォードVSフェラーリ」)が現れたことにより、ソーも故郷アスガルドに向かうが、そこに現れたのはかつての恋人ジェーン(ナタリー・ポートマン「ルーシー・イン・ザ・スカイ」)だった。

言わずと知れた「マーベル・シネマティック・ユニバース」通称「MCU」の29作目にして、「アベンジャーズ」のソー単体シリーズの第4作目。

ちなみにMCUのヒーロー単体シリーズの中ではソーがこの度最長記録を更新することとなった。

というのも、アイアンマンとキャップがそれぞれの理由で離脱し、ソーだけがアベンジャーズに留まったからなんだけど、それに伴い、アイアンマンを演じたロバート・ダウニー・Jrとキャップを演じたクリス・エヴァンスがMCUを去る中、ソーを演じたクリス・ヘムズワースが続投し、第4弾である今作の製作が発表会された時は本当に嬉しかったなぁ。てっきり2人のように何らかの理由で降板すると思ってたから。

また、ソーに対しても「エンドゲーム」劇場鑑賞での特典でちっちゃいマトリョーシカみたいな「クーナッツ」っていうフィギュアがもらえるんだけど、それでソーが当たったことで勝手に思い入れみたいなものもあったから今作に関しては元々観るつもりではあったけど、初日に観たいと思い、早速劇場に行って観ました!!

結論から言うと、今年公開されたMCU映画の中では一番お気に入りとなった作品となりました!いやぁ、楽しかった。

監督は前作に引き続き、ディズニー繋がりで言うと「スター・ウォーズ」のスピンオフも手がける予定でキャリア絶好調のタイカ・ワイティティ!彼の監督作と言えばターニングポイントとなった「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」が有名で前作「バトルロイヤル」でも笑えるシーンが多かったが、今作ではそれ以上、というかやりすぎなくらいギャグシーン満載でMCU作品の中でも一瞬異質なくらいのコメディ映画と言える点が面白い!!

冒頭こそ、いつもの音楽と「MARVEL」ロゴの入りからではなく今作のヴィランであるゴアがいかにして「神殺し」となるに至ったかを哀しみたっぷりに描いてはいるものの、それ以降はガーディアンズと共に宇宙のちょっとした敵と戦う場面でガンズ・アンド・ローゼスの「Welcome To The Jungle」にのせて盛大に暴れ回った後、思わず救う部族の王宮をぶっ壊してしまうシーンなんかはまだ序の口で、その部族から御礼にもらった宇宙ヤギ2匹(トゥースナッシャーとトゥースグラインダー)の鳴き声が人間のさけび声みたいなうるせー感じで爆笑し、その後のスター・ロード(クリス・プラット「トゥモロー・ウォー」)とのちぐはぐな会話からの「目線」のやりとりでまた爆笑ととにかくギャグのオンパレードで楽しい!!

前作からの流れでいうと、今作でも劇中劇の「マイティ・ソー」を公演するシーンがあるんだけど、前作ではふっつーにロキ役でマット・デイモン(「スティルウォーター」)が出てきてて全然ロキに似てない感じで笑っちゃったんだけど、今作ではどうやら前作「バトルロイヤル」のシーンを演じているようで、そこで前作ヴィラン、ヘラを演じるのがあの「有名コメディ女優(誰が演じるのかは是非劇場へ)」で無駄に豪華すぎるのとこの人もヘラを演じたケイト・ブランシェットと全然似てなさすぎて笑っちまった!つか、キャストの人選、ここを豪華にする意味わかんなすぎてワイティティとディズニー頭おかしいでしょw

一種出オチ的なギャグなんだけど、劇中劇自体もチープながら無駄に演出が凝っていて、どうやら次作でも登場する伏線があるみたいで今からちょっと楽しみになってきてる自分がいる。

あと、一番笑ったのはソーを巡るストームブレイカーとムジョルニアの元カレ、元カノのような関係性のくだり!!この後書くんだけど、第二のマイティ・ソーとなって帰ってきたジェーンと共にソーにとっては「元カノ」であるムジョルニアも復活しているんだけど、こそこそとソーがムジョルニアに「元気だったかぁー?」と囁くとその陰からぬぅっと現れるストームブレイカーから始まり、嫉妬心でワープわざと失敗させたり、ソーがご機嫌取りでストームブレイカーにビールぶっかけたりととにかくソーとストームブレイカーの関係性萌がいちいち笑えて楽しかった。ストレンジのマントじゃないけど、今作の武器は表情こそないものの擬人化演出が激しくて興味深い。前半部分でそこのイチャイチャを描くことで終盤、ゴアにストームブレイカーが奪われた際に引きずって歩くことで、なんとなーく、大切なあの子が悪いやつの手に落ちてしまった…なんて感情移入して観ることができるのかも。

そんな感じで全編通して至る所に笑いが散りばめられているんだけど、ギャグ一辺倒ではなくシリアス部分で、その存在感を発揮するのが今作のヴィラン、ゴアを演じたクリスチャン・ベイル!ベイルと言えばみんな大好きノーラン監督作の「バットマン」3部作でDCを代表するヒーロー、バットマンを演じたわけだが、ヒーロー映画出演は「ダークナイト」以来約10年ぶりという本作では一転して悪役を演じているのがまず興味深い。

呪具「ネクロソード」を手にしてからは全身白塗りで目元だけは爛々と光っている不気味な感じは「スター・ウォーズ」のパルパティーンを髣髴とさせるんだけど、それまでのノリのようにおちゃらけると思いきや、いきなりのブラックすぎる笑いで人質の子どもたちを恐怖に陥らせる感じなんかはちょっとヒース・レジャーのジョーカーみも感じさせる狂気性も孕んでいる。

ただ、その発端が貧困で神に祈りを捧げ続けるも、最愛の娘ラブ(インディア・ローズ)を亡くしたばかりか祈りを捧げた神の本性に失望し、「神殺し」の剣「ネクロソード」を手にしたことで闇堕ちしてしまう悲しいキャラクターということもあり、終盤で見せるセンシティブな側面で見せる表情は流石の演技派ベイルと言ったところ。彼が演じることでなんだかんだコメディ要素が強い本作の中で最終盤のドラマ性も際立つという意味ではまさにハマり役と言えるだろう。

ただ、やはり本作の注目ポイントはシリーズで言えば2作目の「ダーク・ワールド」以来の本格的な登場となるソーの本当の「元カノ」ジェーンの再登場だろう。正確に言えば「エンドゲーム」でも登場しているんだけど、あちらはカメオ出演というか本当にサービスという感じで出てきた時はびっくりしたが、まさかあそこからの再登場、しかも第二のソーとなって帰ってくるとは思わなかった!

コミコンでの製作発表で既に「ジェーンがソーになる」ということはわかってたわけだけど原作コミックを読んでいない分「なぜ?」という疑問があったわけだけど、実はジェーン、癌に侵されており余命僅かで治療方法を探す中で北欧神話の書物から「ムジョルニアを手にするとそのパワーで健康的な肉体を手にすることができる」という記述を読み、一路アスガルドで展示されているムジョルニアを手にして、ソーに変身するわけなんだけど、その登場シーンがカッコいい!!

ゴアがネクロソードで常闇から召喚するシャドウモンスター相手に原作コミックに近い、マスクを被り登場するんだけど、初代ソーのように空に放って遠隔操作での攻撃に加えて、元々はヘラに壊されてバラバラに砕かれてしまったことを生かして、なんと敵陣で分裂して破片を飛び散らせた後、その破片をそれぞれ自在に操り、再度集結させるスクラップ&ビルド的な戦法という新しい使い方をしているのが面白い。見せ方も非常にケレン味があってカッコよかった!!

そんなパワフルな戦い方と見た目もどこかマッシブで髪色すら変わっていて、本当に女性版ソーという感じで力が溢れて元気に振る舞っているから、てっきり、あぁ治ったんだって観ていると、実は完治はしておらず、そればかりかムジョルニアを使うたびにジェーンが持つ生命力を消耗してしまっていることが発覚、だから中盤、ゴアとの戦いで力をほとんど使い果たしてしまい、病床に臥してしまうんだけど、あれだけ一作目からソーのヒロインとして、純真に振る舞っていたジェーンというキャラクターが病に倒れて今にもその灯火が消えようとしている姿は見ていてつらい…。

ただ、それ以上にソーはつらいわけで、彼なりに看病して、心に寄り添いながらも「これ以上は戦ってはいけない、病と戦うんだ」と優しく語りかける姿は思わずグッときてしまった。

だからこそ、そんなソーの想いをわかりつつも、ゴアとの最終決戦でのピンチに再びソーとなり駆けつける姿は哀しさを帯びながらもやはりヒロイズムに溢れていた。

その後、戦いに敗れつつも「永遠の門」を開き、一つだけ願いが叶えられるという状況の中でゴアを止めるのではなく、死にゆくジェーンと「1秒でも長く共に時間を過ごすこと」を選んだソーの姿を見て、「神々を滅ぼす」という願いではなく、「自分の最愛の娘を生き返らす」という「愛」を選んだゴアの姿にも泣かされる。

個人的に観る前は「アイアンマンもキャップもいなくなったから、続編が公開されるタイミングでソーも離脱するのかなぁ」なんて少なからず思っていたから、まさかソーではなくジェーンが死ぬなんて思ってもみなかった。けど、ラストそれまでは離れ離れになっていたことからどこかぎこちなかった2人が通じ合って愛を交わすシーンは哀しくも非常にロマンチック。ジェーンが最後に思いついた決め台詞なんだったのかは2人だけの秘密なのかな。

で、ラスト、ジェーンが去り、ゴアも亡くなったことでどうなるの?と思ったらなんと願いによって生き返ったラブを養子にするという道を選んだソー。

これまでを振り返るとオレ様ヒーローとして華々しく登場したソーは姉に目を奪われたり、激太りしたりと個性豊かなヒーローたちの中でも作品が多い分、色々な酷い目に遭う中で、愛する両親やジェーンだけでなく、アイアンマンやキャップという一番の仲間たちを失う中で、どこか「孤独」を帯びていた「神(GOD)」が最後は「愛」を選んで「ラブ&サンダー」=「2人」となり、そして「父(DAD)」になるという結末はなんだか感慨深いものがあるなぁ…。

ちなみに、ラストでキュートにラブ役を演じているインディア・ローズちゃんはなんとソー演じるヘムズワースの実娘さんらしい。いやぁ、パパとしては最高の親バカ展開!

まぁ、個人的には大好きな作品となったけど、良くも悪くもふざけきってることで、シリアスとのバランスがおかしいことになってるのでそこは好みが分かれてるところかも。

ただ、エンドロールの後出てきたのは…

「ソーは帰ってくる」!!

良かった!!クリヘム続けてくれるんだ!!今はこの興奮を噛み締めながらラブ&サンダーとなったソーたちのこれからを見守ろう。

愛は世界を救う⚡️⚡️
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