ブラックユーモアホフマン

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのブラックユーモアホフマンのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

これにてフェーズ4、完。

ゆっくりと時間をかけて、死者を弔い喪に服し、その死を受け入れてもう一度前を向こうとする、暗く静かなフェーズだった。現実の死を悼む本作がその締め括りとされたことに納得。
悲しみを真正面から受け止めて一度ちゃんと落ち込み、新たな世代へバトンタッチされていく兆しが次への仄かな希望となる。本当にすべからくどの作品もそういう話だったと思う。

葬式映画というか、もはや葬式フェーズだった。それは(本作に限らず)現実の世界で起こっていることと無関係ではないのだと思う。MCUも新作を発表できない期間があったコロナ禍、世界から少し元気がなくなった、そのムード。

タロカンの人々のルーツ=ネイモアの母親の世代の話が語られるが、まさに今起こっているロシアのウクライナ侵攻を想起させる。暴力によって文明が、人民が破壊され失われる惨さ、恐ろしさ。そして蹂躙された者たちの怒り。メル・ギブソン『アポカリプト』は恥ずかしながらまだ観てないのだけど通ずるものがありそう。
アフリカ系アメリカ人当事者としての映画を撮り続けてきたライアン・クーグラーらしい作品に、本作もなっていた。前作同様、有色人種(という呼び方自体も今や避けたいが)同士が対立する悲しい構図。

この構図は、プロフェッサーX達とマグニートー達というマイノリティ同士が対立するX-MENシリーズも彷彿とさせる。だから今回、ネイモアがやたらとあっさり「ミュータントだ」って言ってたのは”この世界観でミュータントって今どういう扱いなん?”と混乱はしたけど、文脈としては納得する。

ワカンダの機械や衣装などのデザインも素晴らしいけど、今回はタロカン人のデザインがめちゃくちゃ好みだった。肌の色が青いのはパンドラ星人みたいだなと思ったけど、あの海洋生物とマヤ文明をミックスした感じが凄く好きだった。『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』のフライングダッチマン号の船員の感じとか、『インディ・ジョーンズ/クリスタルスカルの王国』の感じとかも思い出しつつ。

海洋ヒーロー映画のアクションシーンの見せ方で言えば正直ジェームズ・ワン『アクアマン』に軍配は上がる。あのスペクタクルには勝てないが、彼らの戦い方がちょっと不気味で怖いのがまた好みだった。

ルドヴィグ・ゴランソンの音楽もめちゃくちゃ良かった。ワカンダのアフリカンな音色とタロカンのメキシカンな音色が音楽の上でも戦っているような。

そして新ブラックパンサー。シュリ超絶かっこいい。僕は全肯定。フェーズ4で継承されたヒーローの中で僕は正直一番好きかもしれない。

そしてアイアンハートも初登場。アイアンハートとネイモアに関しては今後それぞれの物語がまた語られていくんだろう。もう正直MCU作品多すぎてしんどいけど!(「シー・ハルク」もまだ見てないし)
でもサノス後ちょっと休憩って感じのフェーズ4が終わってさあフェーズ5ってところでいよいよカーン登場だからね、上手いよなあ〜。

【一番好きなシーン】
タロカン人初登場、船を沈めるシーン。怖い。