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海辺の映画館―キネマの玉手箱のyoko45のレビュー・感想・評価

4.8
 映画を観ていた現代に生きる若者3人が、スクリーンに吸い込まれますが、その世界はどれも戦争のある時代ばかり。3人は奮闘するも助けたいと思う人々を救うことができません。
 合成された画面、宇宙、中原中也の詩、字幕もたくさん使われて独特な雰囲気ですが、後半ずっと涙を流しながら観ていました。みな悲しくなる争いなんてしたくないはずなのに、昔も今もどこかで同じ事が繰り返されている。
 なぜ繰り返すのか。過去に起きた出来事は知っていても痛みを知らないから。この若者3人のように、映画のスクリーンに、想像を絶する過去の世界に放り込まれて感じないと分からないから。
 道ばたの草を家族を恋人を慈しむように「未来の平和をたぐり寄せる」、監督の想いがしっかりと込められている作品です。
 8月が今年もめぐってきました。

(メモ)
中原中也:1937年10月22日(30歳没)

婦女隊:会津戦争で中野竹子らによる女性だけの郷里防衛隊(新島八重は参加しない)。
 中野竹子「もののふの 猛きこころにくらぶれば 数にも入らぬ我が身ながらも」、竹子の死後、母(こう子)、妹(優子)は鶴ヶ城で八重と合流。

桜隊:原爆の被害を受けた移動劇団。
・丸山定夫(築地小劇場、新築地劇団)
 1945年8月16日(44歳没)
・園井恵子(宝塚歌劇団、無法松の一生)
 1945年8月21日(32歳没)
・仲みどり(新劇、初の原爆症認定患者)
 1945年8月24日(36歳没)
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