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『栄光と驀走王』に投稿された感想・評価

半兵衛の感想・評価

2025/09/28 07:24

2.5

新東宝の映画って若者向けの題材を扱うと変な方向性の作品に仕上がるなと思っていたけれど本作もそう。オートレースに情熱を燃やす主人公を40過ぎた田崎潤に演じさせているのが無理がありすぎるし、その弟の高島忠夫が学生っぽさが感じられるだけに年齢差が開きすぎていっそのこと父子の方が良かったのではと思ったりも。そしてレースや高島忠夫サイドもちょっとしか触れられておらず、メインが細川俊夫や小倉繁といった悪いヤクザたちの活躍に重点を置いているのもいかにも新東宝テイスト。

高島忠夫はアングルのせいか息子の政宏や政伸の面影がいつもより強めに、そして指揮者という役柄なのにあまりタクトの振り方が上手くないので心配になる。そんな彼が好きになる歌手を目指して上京したもののヤクザに見込まれ愛人にさせられるヒロインの久保菜穂子は途中闇落ちして完全な悪女になったと思ったら、細川に捨てられるや元の優しい女性にすぐ変貌してしまう。あと田崎と同じく元警官のオートレーサー役の丹波哲郎は途中からそんな設定が無くなって単なる悪人レーサーとなっていた。

自動車会社がスポンサー(戦後一時期存在した丸正自動車)のはずなのに後半主人公に巻き起こる事件に驚愕、そこからはいかにも古くさいメロドラマみたいになって同時期に『狂った果実』など新しいスタイルの日本映画が製作されていたらそりゃみんな見なくなるよな。そしてオートレース賭博のため田崎を監禁したりバイクに細工したりといったあくどいことをした細川たちはいつの間にか姿を消していた、あんな堂々と犯罪やっているんだから警察逮捕してくれよ。

ただ光のなかに消えていく兄弟たちと、それを暗い廊下で見守る久保菜穂子の対比による美しい長回しのラストはいかにも溝口健二の弟子らしさを感じさせてなかなか良かった。

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