松田

KCIA 南山の部長たちの松田のレビュー・感想・評価

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
4.0
見応え抜群!
実話を基にした映画の中でも世界の歴史とかニュースとか詳しくなくてもなかなかパンチの効いた一作だと思う。

それは、この映画の中で起きていた事の規模を国家レベルからギュッと縮小してみると見事に日本のブラック企業とその社長だとか、そういうものとの共通項を見出せてしまうと思うから。
まずは自分に擦り寄ってくるイエスマン(ゴマスリ)を優遇してその意見をやたらと聞く。
他にも無茶難題を実行する時に部下に明確な指示を出さず、任せる。その結果、よくやったとも言わず責任を取るどころか勝手しやがって、と言わんばかりに態度を硬化させる。
そうかと思えば、急に態度を軟化させて話しかけてくるといった盛大な掌返しもお手の物。
こうなると結局トップに行くためにはゴマスリしか…となってくると自然と周りにはイエスマンだらけ、不満があるものは去っていき、完全に一極化してしまう。これらを意図してやってるとすれば大した手腕だとは思うが、全く肯定はしたくない。
以前、こんな感じの会社に勤めていた。事実、理不尽な仕打ちに目が死んでいく人も突如としてゴマスリになった人もいた。幸いにも自分は大きい影響受ける前に転職したけど思い起こさずにはいられなかった。
日本国内を見てみると最近はコンプラとかハラスメントだとかよく聞くが、多分まだまだこの映画の状況にリンクしてしまう人も少なくないだろう。

話を国家レベルに戻してみると、今作では何故キム部長が大統領を射殺したのか、という事が大きい部分になる。
何故という部分は、映画を観て追ってもらうとして特筆すべきは、やはり主演のイ・ビョンホン。理不尽な仕打ちや無茶苦茶な決定に自分の心を押し殺してでも、自らの主に忠誠を尽くす。まさにそれが顔に現れたような硬すぎる表情からは感情を読み取るのが難しい反面、何かを抑圧した感じが溢れている。その姿は見る者の心を削りながらも掴んで離さない。
そしてその絶対的な忠誠が揺れていく様を見る事になるが圧倒的な演技力でこちらの心も大いに揺さぶってくる。

なかなかに苦くて重い映画だが、観る価値は大いにある一作だと思う。
松田

松田