アキラナウェイ

KCIA 南山の部長たちのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
3.8
大統領直属の機関として絶大な権力を振るった韓国中央情報部、通称【KCIA】。そのトップは、庁舎の所在地から【南山の部長】と呼ばれ、恐れられていた。

ベースとなるのは、1979年の朴正煕暗殺事件。登場人物の名前こそ変えているが、大統領暗殺事件の裏側を映画化出来るという点に、日本では到底真似出来ない、韓国の底力を感じる。

1979年10月26日、KCIAの部長キム・ギュピョン(イ・ビョンホン)がパク大統領を射殺した。それは、権力闘争の果ての凶行か、はたまた独裁政治の横暴に対する義憤に駆られた制裁だったのか—— ?

朴正煕暗殺事件なんて全然知らなかったので、話についていけるのか一抹の不安はあったけど、全くもって問題ナシ。4人の男達が繰り広げる、狡猾なまでの心理的駆け引きに目が離せなくなる程惹き込まれる。

パク大統領役は先日観た「目撃者」のイ・ソンミン。冴えないサラリーマンの印象からは一転。独裁者と批判される程の権力を振り翳す、冷徹な表情が素晴らしい。

パク大統領の政治的腐敗を亡命先のアメリカで告発する、元KCIA部長のパク・ヨンガク役には、「哭声/コクソン」のクァク・ドウォン。流暢な英語と豪快な人柄で観る者を魅了する。

現KCIA部長であり、本作の主人公キム・ギュピョンを演じるは、韓国を代表するトップスターのイ・ビョンホン。静と動の感情の振り幅の演じ分けは、流石の一言。

KCIA部長と熾烈な権力争いで鎬(しのぎ)を削る警護室長クァク・サンチョン役にイ・ヒジュン。大柄で屈強な肉体と、狡猾な性格で、所謂「イヤな奴」を大胆に演じる。

何せ、このKCIA部長と警護室長との、どちらが大統領の"お気に入り"になるかの鬩(せめ)ぎ合いが、とことん陰湿で緊張感が半端ない。

市民が起こしたデモに対し、戦車を投入する事を提言し支持する警護室長と、それに同調する大統領。史実上での朴正煕大統領も軍事クーデターで政権を握った過去を持つ事から考えると、軍事力で国を制圧しようとする強権的な独裁政治に傾倒していた様子が窺える。

男達の駆け引きはあくまで静かに展開していき、大統領暗殺決行の時、一気にテンションはピークに達する。

序盤は地味で退屈に感じる人もいるかも知れないけど、僕はキャストの誰もが魅力的で全く飽きる事なく楽しめた。

血で滑っちゃうイ・ビョンホンが見所。