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KCIA 南山の部長たちのdeenityのレビュー・感想・評価

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
4.0
本作も実は最初の鑑賞は4月だったのですが、徐々に記憶が薄れてきたので再鑑賞してのレビューになります。と言うのも、日本での例の事件があったことをきっかけに思い出して、もう一度鑑賞し直そうと思ったので、二度目を鑑賞してからとりあえず簡単にレビューだけさせてもらおうと思います。

本作はパク・チョンヒ大統領暗殺という実話を基にしたフィクション作品であり、この事件に関しては真相が明らかになっていないことが多いこともあって、推測による部分があったり、登場人物自体も実在する人物を投影こそしているもののほとんどが偽名にしたりと、丸々史実通りではないそうです。

ただ、殺害した人物は当時パク大統領の側近でKCIAの部長だったキム・ギュピョンであり、No.2とも言えるこの人物による犯行ということで、一体何が背景にあったのか、という点は本作の見どころになっています。
また、当時韓国情勢は独裁政権下ということもおり、かなり危ない橋を渡りまくっていたようで、作中にも描かれたコリアゲート事件などとの関連性や関連人物が行方不明になるなど、実際のエピソードを活かした作りではあるので、フィクションとは思えない重厚な雰囲気の作品であることは間違いありません。

結果的にパク大統領は史実としても暗殺されるので、そこに向けてストーリーは進んでいくことになるわけですが、本作がその背景にあったとして描きたいのは嫉妬心でしょうね。
パク大統領とキム部長は大統領就任以前の革命を起こした時から一緒であり、互いに信頼し合った関係性。日本語で話すのはそういう過去の名残りでしょうし、本当の自分でいられるのは2人の時だけなわけです。

そんな2人の信頼関係が揺るぎ始め、キム部長の嫉妬が静かに、そして沸々と煮えたぎった末の惨劇。
たしかにキム部長は一言もそういう発言を漏らしてはおらず、最後の言葉も表面的には国のためにという体をとってはいますが、本作で描きたかったのは男の静かに燃える嫉妬心の恐ろしさ、なのだと思います。

クライマックスでの詰め寄るシーンの緊迫感は凄まじく、そこまで静かで重々しい展開が続いていたので、それが一気に弾ける場面は一番の見どころだと思います。
ただ、そうすると室長とガキのように揉めるシーンなんかはそういう印象作りとしてはノイズにもなる気はしますし、ある意味では嫉妬という青さみたいなものを象徴しているのかもとも思ったり。
靴の比喩とかも上手いなってシーンもありましたし、重厚な雰囲気が良かったのですが、個人的には革命の背景は描いておいて欲しかった気はします。
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