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KCIA 南山の部長たちのTラモーンのレビュー・感想・評価

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
4.2
1979年のパク・チョンヒ大統領暗殺事件に基づいた作品。事件には詳しくなかったが、それでも十二分に楽しめる傑作!


1979年10月26日。韓国中央情報部(KCIA)のトップであるキム部長(イ・ビョンホン)が当時の韓国大統領パク・チョンヒ(イ・ソンミン)を射殺した。
遡ること40日前。韓国政府の違法行為を知る、元KCIA部長のパク(クァク・ドウォン)がアメリカへと亡命し、重要参考人として招致された下院議会聴講会にて、パク・チョンヒ大統領を「革命の裏切り者」として告発し、韓国政府の腐敗と独裁を非難する証言を行う。これに激怒したパク大統領はキム部長に事態を収束させるよう命じる。


めちゃくちゃ面白い!元々がかなりショッキングな事件なのもあるけど(あとからwikiで調べた)自国の大統領暗殺事件をベースにここまで面白い作品をつくってしまうんだからやっぱり韓国映画の気概は凄まじい…。

とにかく登場人物と組織が多くて情報量が…ってなるけど基本的フォーカスはイ・ビョンホン演じるキム部長が、何故大統領を銃撃するに至ったのかという心理描写。
結果的に暗殺の首謀者で実行犯ということになるけど、彼が如何に韓国のことを思い、国民の身を案じ、パク大統領に尽くしてきた人間であるかがヒシヒシと伝わってくる演技と脚本が素晴らしい。
決して野心家ではなく、生真面目な男が母国のために何故この選択をしたのか。終盤、キム部長が大統領に拳銃を向けるころには視聴者は間違いなくキム部長の暗殺作戦に肩入れしているはず。

パク大統領を演じたイ・ソンミンの演技も素晴らしい。元々は自身も革命で実権を握った身でありながら、権力欲と猜疑心に飲み込まれ、国民や側近をなんとも思わず、自分の立場を脅かすものには容赦ない粛清を下す腐敗した姿を見事に演じきっている。
大統領のイエスマンで、弾圧的な政治にも肯定的はクァク警護室長(イ・ヒジュン)の横暴さと相まって、当時の韓国政府が如何に独裁的なものであったかを非常にわかりやすく表現している。

"暴徒は戦車で轢き殺してしまえばいい!"
"私が発砲命令を下せば、誰も文句は言えまい"

最後の最後まで大統領の説得に挑んだキム部長。ともに平和な未来を築くために戦った革命同志であるパク大統領に、目を覚ませと正面切ってぶつかる表情は決して殺人者には見えない。

"俺たちは何故、命懸けで革命を起こしたんだ?"

信じていた先導は自分の見たいものだけを見る権力のクズに成り下がった。だから拳銃を抜くしかなかった。あのシーンの緊張感、本当に凄まじい。劇伴が本当に素晴らしい。

"閣下は革命の裏切り者です"

エンドロール後、実際の写真が流れてその後の史実が語られるんだけど、本当に正義は栄えないというか…。
作中ではチョイ役に見えたアイツがまさか実権を握り、再び軍部独裁政権が発足してしまうなんて。しかもここで発足した軍事政権下であの光州事件が起こっていた!気になる方はソン・ガンホ主演の『タクシー運転手』を是非。

キム部長ご本人の写真と肉声が気高くもあり、虚しくもあり、これが史実だと思うと胸が苦しくなる。

"私は軍人であり革命家です"


めちゃくちゃ男臭くて、複雑で熱苦しい人間ドラマだけどキム・ソジンが出てくるシーンは超絶美人でお目々が助かりましたわ。でも無知なのでロビイストって調べてもよくわかんねぇな笑。
クァク・ドウォンは70年代ファッション似合うなぁ笑。
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