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KCIA 南山の部長たちのtakaoriのレビュー・感想・評価

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
4.0
2024年252本目

韓国の戒厳令のニュースを見て、そう言えばこの映画を見なければと思い出して鑑賞。ちょうど今年、全斗煥のクーデターを描いた『ソウルの春』が公開されたばかりなのでとてもタイムリーな出来事だ。大統領の暴挙から民主主義を守ろうとする韓国市民の勇気と行動力に驚かされたが、ほんの44年前に光州事件があったばかりなので、「あの出来事を繰り返してはいけない」という人々の強い思いがあったことを感じさせる。韓国は民主化してからまだ36年しか経っておらず、全斗煥に家族や友人を殺された人がたくさんいるからこそ、危機感があるのだろう。しかし、右傾化はなはだしい若年層にその感覚が共有されているかは疑問だという声もある。だからこそ、民主化の歴史を映画という大衆娯楽の形で語り継いでいかねばならないという韓国のクリエイターたちの熱い思いがあるのである。
本作『KCIA』は、まさに『ソウルの春』の前日譚となる朴正煕暗殺事件について知るのにピッタリだ。全斗煥も本人こそ映画に登場しないが、一連の事件の鍵を握っていることが分かる。一方で、確かに骨太の重厚な政治ドラマではあるものの、物語はどこかラブストーリー的であり、主人公キム部長と朴正煕、それに警護室長の「三角関係」の痴情のもつれの故の悲劇という感もある。男社会の「ホモソーシャル」が「ホモセクシャル」に近似していく例のパターンがここにも見て取れる。主演イ・ビョンホンが感情を押し殺した無表情を貫いていることが、事件の成り行きのアンビバレントな印象を強めている。
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