カメラの存在を感じさせない、圧倒的な撮影技術にただただ驚嘆。
映画は勿論のこと、絵画から写真、さらには小説に至るまで、どこから何を見ているのかという視点の在り処が存在する。
その視点の持ち主が誰で、なぜそこから見ているのか。それを考えることも作品の楽しみ方だと個人的には思っている。
しかし、この映画は「視点」を感じさせない。
その場に一緒にいるかのような、共に走っているかのような感覚になる。カメラの視点ではなく、私の視点として観てしまう。
大仰なセリフがあるわけではない。
任務完了時にも華々しい何が起こるわけではない。
ひとりの人間が与える影響の大きさと、それでいながらそのひとりが英雄になれるわけでもない現実。
戦場に在る誰かの家族写真、かつてそこに住んでいた人たちの生活の跡。兵士たちの雑談。
すべてにおいて大げさではないところがリアルだった。
効果音も素晴らしい。時折聞こえる自然の音がたまらなく美しかった。