ギルド

列車旅行のすすめのギルドのレビュー・感想・評価

列車旅行のすすめ(2019年製作の映画)
4.3
【華麗でジャンキーなタイトル詐欺】【東京国際映画祭】
一台の列車に同席した精神科医によって様々な出来事に吸い込まれるサスペンス映画。

 ある意味でタイトルから予測不能な展開が多い作品でその中で伝えられるテーマが変則的で面白かったです。
この映画のポイントとその源は「複製された男(原題:ENEMY)」脚本家のハビエル・グヨンの奏でるストーリーラインだと思います。

 この映画・原作自体は文学・映画というインプットに対するアウトプットの構成と現実の乖離を描いた面白さを内包しています。
個人的にはそこに「複製された男」の最大の良さである深層心理を映画ジャンル(スリラー、本作だとサスペンス)に巧みに落とし込むところが優れていると感じました。

 特に優れているのは通常の映画では微妙と思われる「展開の後出しジャンケン」が本作ではテーマに対して面白い要素として効いているところだと思います。そのくらい次に何が来るかが読めないし先に来る展開も面白く観客をワクワクさせてくれるのが見事です。
本作の中身についてはまた別の機会で書くつもりですが、一つだけ挙げるとすると①文学/映画における世界観の創造が言語という複数解釈できる記号で健常にも禁忌にも構成されるところ ②精神疾患の特有の現象、この2つを映画というプロットで融合した「ゴミ収集」のシークエンスが良かったです。(何を語っているかは見た人なら分かるかと思います)
もちろん俳優陣も中々に良くて、スペインの精鋭たる面子が奏でる演技も体を張った凄みがあったかな。

 映画は単体で見ても面白い、サブカルチャーありきでも面白い。けれども本作は映画単体の面白さ・製作陣のトークショーで奥深さを楽しめる一作でまた強く見たい作品になりました。
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