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マーティン・エデンの教授のレビュー・感想・評価

マーティン・エデン(2019年製作の映画)
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やっぱり映画はフィルムだなぁと、冒頭のシーンから思う。ルカ・マリネッリの容姿の美しさも加わって映える。
そして、随所にインサートされるカットの切れ味も含めて「映画」を紛れもなく観ているという気持ちが高まる。

「何か美しいものを見た気がする」という感触から、知識欲が芽生え、観察眼が生まれ、思考が巡る。
「恋」が「言葉」を生み、「詩」になり「物語」になる。

出会いや影響はあれど。いつもそこに「ポツン」と存在しただ書き続けるマーティン・エデンの姿に心が揺さぶられっぱなし。
恋人のエレナは「動機」であったとしても、知識を授けた「師」であったとしても、メフィストたるブリスが提示する「創作の本質」には至らない。
ただそれでも全てが物語を語る上で不可欠なピースとなっている脚本の質の高さに唸る。

「物語」の構造自体が「創作論」としてのテキストとしてしっかり機能し、芸術に影響する世相然り、背景然り、体験然りがほんの何気ない描写の中に説明的でなく折り込まれていて、素晴らしい。

残念なのは、成功を手にしてからのエピソードが駆け足なのと、唐突になってしまい失速した感のあるところ。
マーティンがなぜ、このように破滅的になってしまったという部分が本作にはとても重要な部分だと思うので残念ではあった。
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