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オフィサー・アンド・スパイのkazukiのレビュー・感想・評価

4.0
近代フランスとユダヤ人社会に大きな影響を与えたドレフュス事件の映画化。

主人公ピカールは、自分の感情は別にして、自らの〈価値観〉に従い行動する人物。その結果、軍の陰謀や世論と激しく争う事になる。100年前の話だが物凄く現代性を感じるのは、近年余りにも〈価値観〉というものへの信頼が揺らぐような事象が多いからかも知れない。

ドレフュス事件と言えば、当時の新聞Le Petitのイラストが有名だか、史実に可能な限り忠実に撮ったという本作でもそのイラストを参照にした構図が多く見られ、それも楽しい。[noteに当時のイラストを纏めた記事を掲載するので、ご興味が有れば下のURLから覗いて下さい!]

ポランスキー自身の様々なスキャンダルや、アウシュビッツで母親を亡くし、自らはゲットーの生き残りであるという事実を考えると、この映画にも様々な見方が産まれる。個人的には、ポランスキー自身の沢山の落ち度を認めつつ、だからと言ってその全てを抹消してしまいたいという欲は無い。

それにしても、88歳にしてまだこんな傑作を作ってしまうポランスキー。『ウェストサイド・ストーリー』のスピルバーグが75、『ハウスオブグッチ』のリドリースコットが84、、日本未公開ですが『ベネデッタ』のバーホーベンも83歳。映画界はどうなっているんだ?笑

流石巨匠と思うのは、まず絵が美しく、またいちいち撮影が上手いという事。例えば冒頭、ドレフュスの軍籍除去式のシーンではゆったりとパンするロングショットで多くの軍関係者や聴衆の中に連れ込まれるドレフュスが映される。当時の注目度の高さやドレフュスの孤独感が強調される。その後ピカールの双眼鏡を通したアップとロングの切り返しではドレフュスの感情とそれを除くピカール達の反応から主要人物間の関係性が見えて来る。


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Note: https://note.com/hk427eb/
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