Jun潤

オフィサー・アンド・スパイのJun潤のレビュー・感想・評価

3.8
2022.06.08

ポスターに惹かれた作品。
1894年に発生した、ユダヤ人がスパイ容疑で逮捕された「ドレフュス事件」を基にしたロバート・ハリスの小説を原作に実写映像化。
ロバートは今作の脚本も担っている。

アルフレド・ドレフュスが大勢の兵士と国民の前で軍位を剥奪された。
それから数ヶ月後、病に倒れた防諜部長に代わり、ピカールが大佐となって就任。
ピカール大佐は、防諜部の仕事の実態を知っていく中で、ドレフュスが冤罪であるという事実に近付き、真相に迫るが、それでも冤罪を認めず、それどころか文書の偽装などの妨害工作をしてくる軍部と徹底抗戦を展開することとなる。

濃密。
濃すぎる展開にスパイ×アクションではなく徹底的なスパイ×ミステリーで高めな満足度に加え鑑賞後感はドッと疲れる感じ。

フランス映画の特徴なのか史実を基にするとそんな風になってしまうのか、視点や場面、時間の切り替えがフワッとしていたため、次々明らかになる真相と軍部の妨害によって生まれる矛盾と共に、キャラ相関や物語の進み具合を整理したりと頭を追いつかせるのもやっと。

しかし頭が追いつきさえすれば、ユダヤ人迫害や大きな戦争を背景とした社会不安、当時の情報管理の杜撰さやいつまで経っても変わらない人間の本質に辟易としながらも、良心に従って動き続けるピカール大佐への安心感は鰻登り。

今作で描かれた、当時の文書改竄や軍による検閲、国家間で行われるスパイ活動の数々は、100年前の出来事とはいえ今にも通じるものが。
こう思うと昨今のIT技術の進化は、当時、またはそれ以前から繰り広げられてきた、情報の漏洩と傍受されないためのより高度な技術の開発、さらにそれを攻略しようとする技術の発明など、そんないたちごっこの中で発展してきたものではないのか。

世代的にはIT技術の進歩の恩恵を受け続けてきた世代ですが、その歴史にはゾッとするような事実があったんだなと思うと、メディアリテラシーって大事なんだなと、もしかしたらもっと大事にすべきこと、考えるべきことがあるんじゃないかと、頭を悩ませるばかりです。

自分を当時のフランス国民に当てはめてみると、果たしてユダヤ人迫害に賛同して歪められた事実を受け入れるのか、それとも、リークされた情報でもって、より大きな組織が仕掛ける扇動に巻き込まれてしまうのか。
自分の目で確かめて、自分の頭で考えていきたいけれど、果たしてその情報源も正しいものなのか、それすら疑わしくなってしまいます。
Jun潤

Jun潤