回想シーンでご飯3杯いける

マリッジ・ストーリーの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)
4.8
Netflixがとんでもない傑作を送り出してきた。スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバー、つまり「アベンジャーズ」と「スターウォーズ」という、アメリカ映画の二大シリーズから主演を抜擢し、離婚調停から離婚裁判までの流れを描いた夫婦の濃密な会話劇。

監督はノア・バームバックで、彼は「フランシス・ハ」や「マイヤーウィッツ家の人々 (改訂版)」でも脇役でアダム・ドライバーを起用してきたので、ここで一気に主役に押し上げてきた格好になる。そして本作は、まさにアダムとスカヨハの演技力に裏打ちされた最高の作品になっている。

冒頭から既に離婚調停のシーンで、そこに至った経緯を直接的に描く事を省いた構成にも驚いたが、アダムが劇団監督兼演出家、スカヨハが女優という設定がミソで、観客の共感よりも「役者の演技力を演じる」というメタ構造で引き込んでいく、何とも意欲的な作りになっている。「私は舞台で泣けない女優よ」と言いながら、本作の女優としてのスカヨハはちゃんと泣いているシーンであるとか、これがもうめちゃくちゃ面白くて、ヒューマンドラマの体裁を取りながら、表現手法は限りなくコメディに近く、この辺りがいかにもノア・バームバック監督らしいと思う。

泥沼の親権争いから結末に向かう後半は、あの「クレイマー、クレイマー」を思わせ、長回しによる2人の演技も凄いのひと言。当事者だけの密室劇という感じではなく、弁護士の戦術や、互いの家族との関係も盛り込まれており、群像劇としても面白い。監督をして「本作はキャストの為にある」と言わしめた、役者魂炸裂の作品なのである。

結末については触れないが、「ジョーカー」と並ぶ2019年のベスト作品候補である。

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