JT

ハニーボーイのJTのレビュー・感想・評価

ハニーボーイ(2019年製作の映画)
5.0
種は開花するために自己破壊を行う
人は成長するために必要な苦痛を伴う
過去の記憶と憎悪が満ちて愛が零れた

2020 . 18 - 『 Honey Boy 』

アルコール依存症のリハビリ施設でカウンセラーにPTSDを宣告された俳優シャイア・ラブーフの伝記作品
病気の要因は、自分を育てた不完全な父親であった
カウンセリングを通し幼少期を振り返り、自己セラピーのため父親について綴ったものが脚本となり映画に

幼少期のラブーフを『ワンダー 君は太陽』のノア・ジュプが、カウンセリングを受ける現在をルーカス・ヘッジズが演じて、シャイア・ラブーフ自身は自ら乱暴な父親を演じ、理解するべく自分の父親と過去のトラウマに真っ向から向き合った

"父が唯一自分に与えた価値あるものはこの痛みだけ"
父親を考えると優しい姿より怒ってる姿が目に浮かぶ
柔らかな声よりも、怒鳴ってる声が強く頭をめぐる
死ぬほど憎くて昔はよく枕に顔をうずめて叫んでた
誰にも聞こえないようにただベッドを力強く殴ってた
父を100万回は憎んだのに、何よりも嫌だったのは
たった1回の優しさが100万回の憎しみに勝ることだ
痛いほどの冷たさにほんの僅かな温もりが勝ることだ
世界で一番憎い人で、世界で一番嫌いになれない人は
車で夜遅くまで一緒に出かけて、家に帰ってきた時に
後ろで眠る自分を抱き抱えて部屋のベッドに運んだ
それから自分はよく寝たフリをして父親を待ってた
憎んでるのにその温もりを待つ自分も心底嫌だった
父親はいつ自分自身を嫌になり憎んだりしたんだろう
どんな時に叫び、何にその怒りをぶつけてたんだろう
自分が父を憎む時にきっと父も自分自身を憎んでいて
自分の苦しみと同じくらいに父も苦しみを抱えていて
このどうしようもない痛みをずっと恨み続けていた
子供には親が必要で親には子供が必要なのと同様に
私たちに痛みは必要で、その苦痛の先で恨みを捨てる
痛みを分かち、弱さを分かち、認め合い、必要し合う
憎悪に溢れて、記憶を手繰り寄せた時に、涙が零れた
愛が零れて、いまはわかる、なんて愛しくあまい痛み

シャイア・ラブーフは『Fury』での演技が印象に残っていたけど本作ではもう言葉にならないほどよかった。トラウマの父親を演じきった勇気と真摯に向き合う姿勢に心を打たれました。現在15歳のノア・ジュプくんも文句なしに素晴らしい。何といってもルーカス・ヘッジズは個人的に最高潮だと思った。シャイア・ラブーフの特徴をしっかり掴んで、口調や表情を細かく表現して、繊細でいて強烈。そして女監督のアルマ・ハレルが紡ぎ構築させた映像と音楽は宝石のように輝かしい。注目すべき監督の一人になりました。

この作品のような私的な映画はきっと多くの人を救うと思う。

全身全霊で受け止められる私の映画になりました。