落ち着きのないギアの行動を追う風変わりな作品だった。オーケストラのパーカッショニストとしての職業病なんだろうか。待つことに不安を覚え、あらゆる音が刺激となり、気が散ってしまう。作品は街中の音もドアの開け閉めの音も、あらゆる音が過敏に聞こえる演出で、ギアが感じている世界を表していた。
絶対音感をもち、歌うこと、パーカッション以外の楽器も演奏する天才肌のギア。
音ある世界で、音に振り回されている。実際には音だけでなく、あらゆる女性から刺激を受け、女性に愛想を振りまき、いや女性だけでなく、人好きで、その場でにこやかに、主体なく場に振り回されている。
外界すべてが刺激で、一人の音楽家が刺激に翻弄されていく様子が描かれていた。
私はあまり音に過敏にならない方なのだけれど、この作品はギアの行動だけでなく、音が強調されているので、観ているこちらも落ち着かない気分になる。音に敏感な人はこの作品はつらいかもしれない。ところどころグルジアの美しいハーモニーにも出会えるけれど、ギアが歌ったりする場面以外は、強調された音の嵐。
スコアを書こうとするが集中できず、焦燥感があり、鬱っぽくみえる。最近変わったと仲間に言われていたから、もともとではないみたい。首都の喧騒と都会に住む人々の忙しなさを表したんだろうか。ギアは歌い続けられない理由があったのか、そこがいちばん気になったこと。
人気のオタール・イオセリアーニ、3割しか合わない。特集を楽しみにしていたんだけどこの先観ていこうか悩み中。