バウハウス最後の巨匠といわれるマックス・ビルの生涯を追うドキュメンタリー。
バウハウス100年映画祭「プログラムD」
破天荒な少年時代、厳格な父との難しい関係を経てバウハウスに入学したマックス・ビルはその多彩な活躍と同時に政治活動にも積極的に参加し、国会議員まで務めていたことはこの映画で初めて知りました。
バウハウス入学後は同郷のスイス出身ということで教授のパウル・クレーと親しくなったとのことで、紹介される初期の絵画がクレーの作品に酷似していることは非常に興味深いものがありました。
バウハウス閉校後はスイスに戻り、反ナチス活動の支援を行ったとのこと。
当時のスイスのナチスに対する微妙な忖度が窺われ、その中でも抑圧体制に対するマックス・ビルの姿勢のブレないところには、戦後のさまざまな活動での姿勢に通じる部分を感じるのでした。
映画は主に屋外のオブジェを中心としたコンクリートアートの紹介の比重が多いのですが、インダストリアルデザイン(彼のデザインしたユンハンスの時計は現在でも販売されている定番)やタイポグラフィなどのさまざまな活動にも焦点が当てられているとその多才ぶりを俯瞰することができたのではないか、と感じました。
彼の二人目の婦人のアンゲラは自宅を彼のメモリアルアーカイブとして保存しており、そのインタビューは戦後から晩年に至る彼の活動について興味深いエピソードに溢れ、その人柄や業績についてより詳しく知ることができるのでした。