真田ピロシキ

マトリックス レザレクションズの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.0
20年近い間をおいて作られたマトリックス新作。最初に聞いた時は「またハリウッドのリブートという名のリサイクルシリーズかよ」と呆れていたのだが、賛否が割れているらしく朧げに伝え聞く評には興味を覚えさせられて、映画館には行けなかったもののU-NEXTに来たら即座にポイント鑑賞。

まずネオはまたもやマトリックスに囚われており、その中では旧三部作がカリスマゲームクリエイター アンダーソン君が手掛けたゲームとされていて、とうの昔に完結したはずのゲームは続編を望まれている。製作者のアンダーソン君がいくら嫌がっていても他人の手で作られてしまうと言われてて、これがそっくりこの映画を表していそう。何せワーナーを名指しで悪口言う始末で、ウォシャウスキーのワーナーへの感情が伺い知れる。なお、アンダーソン君の上司はバージョン2.0のスミスさん。マトリックス3の公開前に「結末はダメリーマンのアンダーソン君が会社で居眠りしてたのをスミス部長に叩き起こされて叱責される」と言ってたのを思い出すね。新作に向けて進みだした社内では過去作を振り返るのだけれど、その語られ方が称賛してるのにあまり好ましくは見えなくて、ウォシャウスキー的にはマトリックスは今更振り返るものじゃないという思いがありそうにも見える。スミスさんがゲームが同じ物語、同じ顔で作られ続けると言ってるのも示唆的で、モーフィアスやスミスさんが顔を変えて出続けるのは解釈を変えたという名目で使い回されるアメコミのリサイクルキャラクターのよう。ウォシャウスキーの反ハリウッドここに。

なのでこの辺は真剣に見ていたのだけれど、ネオが現実に帰還してからは一気に物語を見失う。私は1しかマトリックスの話を覚えていなくて、3に至っては途中で見るのを止めてたと思うので、それまで以上に過去作の引用やキャラクターを出されても分からない。ナイオビって誰だっけ…お祖父ちゃんがなんとか船長とか言われましても。私に分かるのはネオ、トリニティー、モーフィアス、スミスさんだけなんです!危険な自由を選ぶか、安穏な隷属を選ぶかもあまり真剣に見れてなかったのもあるが前の映画でやってたのと違いが見いだせず、むしろ世界の"真実"を知ってる人達を未だ無批判に垂れ流すのはフェイクニュースが溢れる今ヤバくねとも。あとウォシャウスキーは最近の新興メディアはお好きじゃないのか、浮浪者みたいな奴(誰なのコイツ)によるSNSディスやエンドロール後には猫動画も小馬鹿にしてたり、私的なメッセージ色は強い。この辺で好みは分かれるかと思う。

マトリックスだしアクションを見れればいいやとも思うけれど、悲しいかな本作のネオはバリアを張って衝撃波を撃つのが大半のドラゴンボールスタイル。キアヌがもう昔のようには動かせないのかな。ジョン・ウィックになったキアヌにネオを期待してもいかんかった。キャリー・アン・モスも歳を重ねた姿で続投させてるのはエイジズムに反逆して良いことであるが、昔のままにはいかない。やはりこの新作は蛇足かなと思った。他人に作られるくらいならと生みの親が作った意義は買いたいけど、シリーズを葬り去ったわけでもなくてまだ続けるのかも分からない。せめてターミネーターとかのような映画ゾンビ(とっくに死んでるのにゾンビのように作られ続けるシリーズのこと)にならないといいね。