ニューランド

おばけのニューランドのレビュー・感想・評価

おばけ(2019年製作の映画)
3.6
☑️『おばけ』及び『散歩する植物』▶️▶️
勝手に今回のコンペ中、最も破天荒な作品を期待してたので、むしろウエルメイドに属する作品だった事に、序盤まごついた。見終われば、結構気持ちいい。少しだけ趣味的が高じた日常の内宇宙的トレースの作品で、大自然の力に従い崇める一方、宇宙・彼岸を表すミニチュア・光の操作・創ったのや似せた装飾品群らで壮大なスケールを組込んだ作品を只ひとりで人知れず造り続ける自主映画作家(作者そのもの)を捉え続け、その現実の韜晦に充ちた創作のリズム・呼吸を精巧かつユーモアたっぷりに描きあげた作品だった。まるで、西岸良平のSF系漫画のようで、この様子は宇宙の果て・宇宙すら細工扱いできる、フランクな死者たちに覗き見され、招かれ助力もされてるのだが、彼たちは地上の大きな運行には無力で、そればかりか、彼ら自身が作家の作品の一部でもあり、互いに存在を喰いあっている、それは作者の創作と日常(生活)の関係でもある。撮り方は堂に入ってて、端正ですらあり、余裕・ルーチンも感じられる。
実写をある程度ベースにして、そこから微妙も考えもつかぬニュアンス・飛翔をもたらす加工をリアルをどこかに残して着実に加え続けてく魔法の、短編を数本ながら、現代最高の映像作家のイエジー・クチャの亜流のようなものだが、粘り・精緻・達成度は1/3程度か。しかし、頂点クチャを目指してもしようがない。
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同時上映の、流行りというか当代主流の‘人間力’視点に反旗を翻す『散歩する植物』は、むしろ、上映後登壇の分裂気味か、いやいや瞬間毎・質問を大きく飛び越えてイメージが言葉や仕草で制止できず跳梁して定着を拒んでるみたいな、極めてユニーク・魅力的な作者の方が面白く(どうやって現場を引っ張っていったのだろう)、作品はしっかり狂気に染まってゆく恐れ知らずが魅力だが、作者が本当に惹かれてる岩を次回廻しにした為か、すこし及び腰で大人しいタッチ(クリアさを汚した静かな不気味さは確かにあるが)なのはちょっと残念。
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