下北沢を舞台に古着屋店員、荒川青を中心にして描く群像劇。
映画全体を通して、喫茶店で隣の人の会話を漏れ聞いてしまっているような日常の数々。
「誰も見ることはないけど、確かにここに存在してる」が表すように、本当に当事者以外にとっては心底どうでもいいような話。だけどそれが尊いのだ、と。去りゆく日常こそが尊いものなのだと。
映画としてはまず印象的な長回しのシーンが多く面白い。
長回しの多用によって生まれる実在感。本当に盗み見してしまっているような感覚は大きな特徴。
それの若葉竜也の演技が抜群に上手い。
彼の演じる荒川青という青年のボンクラ感が半端じゃ無い。ほんの少し演技の仕方を間違えれば途端に気持ち悪くなりそうなキャラクターなのに、若葉竜也は抜群の感覚で全くそうは感じさせない。むしろこのボンクラ青年が堪らなく愛おしくなってしまう。
そしてなんと言っても群像劇の醍醐味とも言える終盤の大集合シークエンスは大爆笑もの。
「あっ、あの人だ。えっこいつまで出てくるの!?」の連続で展開されるもはやコントのような怒涛のディスコミュニケーションの連続に笑い転げる。
笑えるコメディ映画としてとても面白いうえに、なんだかちょっとグッとくるような尊さも感じる素晴らしい映画だった。